蚊がブンブンと飛びはじめる季節がやってきました。
「かゆいな...」と気づいたら、もう遅い。
すぐに次の標的を見つけては、自由自在に飛び回る。耳にまとわりつく甲高い羽音で、寝苦しい夜を経験したことがある人は、きっと多いのではないでしょうか。
そんな私たちの救世主となってくれるのが「蚊取り線香」。
小さなストレスから解放してくれる、日本人にとっては夏の風物詩です。
蚊取り線香のルーツは、平安時代に使われていた「蚊遣り火(かやりび)」にあると言われています。当時は、よもぎの葉やカヤの木、杉や松の青葉を火鉢で燃やし、煙を炊いて燻すやり方で蚊を追い払っていました。日本の古典の随筆や和歌、俳句にも「蚊火」や「蚊遣火」としてその記述が残っています。
ただ、当時は今の蚊取り線香のように化学的な殺虫効果はなかったのではないか、ただでさえ暑い時期にモクモクと燻されていたので相当な煙たさ、暑苦しさがあったのではないかと想像できます。
やがて、明治中期になると大日本除虫菊株式会社が初めて、殺虫効果のある蚊取り線香を開発しました。
蚊取り線香の原料である「除虫菊」はキク科の多年草で、和名は「シロバナムシヨケギク」と言います。原産国はセルビア共和国で、この花は古くから殺虫効果があると言われています。
日本に初めて防虫菊が伝わったのは1886年。
アメリカから大日本除虫菊株式会社の創業者へ種子が贈られ、線香に防虫菊を練り込んだ「蚊取り線香」が誕生しました。その後、和歌山県を中心として国内で除虫菊の栽培に成功し、人々に広まっていきました。
そんな蚊取り線香ですが、最初は今のような「渦巻き型」ではなく「棒状」のものが製造されていました。
棒状の蚊取り線香は、火はつけやすかったのですが、立てて使うために倒れて火災が発生してしまったり、燃焼時間は45 分ほどと長持ちしなかったりすることが問題でした。そこで、もっと安全で長時間使えるものを、ということで渦巻き型の蚊取り線香が誕生しました。
最近では、色々な蚊取り線香が登場しています。
香りの成分が練り込んであったり、太巻や細巻になっていたり、ペットにも使える天然成分が入っていたりと、その種類はさまざま。
蚊取り線香のにおいをかぐと、幼い頃におばあちゃん家で過ごした夏を思い出します。
外で走り回って疲れて帰ってくると、縁側にはスイカや冷たいお茶が用意されていました。うちわで仰ぎながら休んでいると、蚊取り線香のにおいがほんのり漂ってくる。
しかしそれでも蚊はしぶとく寄ってくることもあって、パチンと叩きながらみんなで笑い合ったりもしました。
蚊除けの機能だけではなくて、懐かしい記憶もほんのり浮かび上がらせてくれる蚊取り線香。
今年はあと何回、火をつけられるでしょうか。
暑い暑い夏も、決して嫌なことばかりではないかもしれませんね。
高根恭子
うつわ屋 店主・ライター
神奈川県出身、2019年に奈良市へ移住。
好きな季節は、春。梅や桜が咲いて外を散歩するのが楽しくなることと、誕生日が3月なので、毎年春を迎えることがうれしくて待ち遠しいです。奈良県生駒市高山町で「暮らしとうつわのお店 草々」をやっています。好きなものは、うつわ集め、あんこ(特に豆大福!)です。畑で野菜を育てています。
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