日に日に涼しさが増して、秋らしい気配が近づいてきましたね。
私は、夏から秋への移り変わりの時期が好きだなぁと思います。
空の様子が変わり、だんだんと日が短くなっていく。
植物たちも冬枯れの前の盛りで一斉に咲き出し、
生き物たちもしっとりした鳴き声で秋を感じさせてくれます。
みるみる変わっていく景色や空気に、趣を感じる季節です。
そして秋は、おいしい食材もたくさん出てきます。
くり、かぼちゃ、きのこなど定番の旬のものはもちろん外せないですが、今日のテーマ「高野豆腐」もまた、この季節にぴったりの食べ物だと思います。
噛んだときにジュワッと広がる出汁の味わいや独特の食感が特徴的で、栄養価が高い保存食として昔から食べられてきました。
高野豆腐は、豆腐を凍らせてから乾燥させているため、「凍(こお)り豆腐」とも呼ばれています。
言い伝えによると今からおよそ800年前の鎌倉時代、高野山の僧侶が精進料理で食べていたことがはじまりだとされています。ある日僧侶が大変寒い日に豆腐を買いに行ったのですが、家の中に入れることを忘れて翌朝カチカチに凍ってしまいました。どうしたものかと悩み、豆腐を溶かそうと天日に干してみたら偶然にも食感がおもしろい豆腐ができたといいます。
その後、凍らせた豆腐を凍ったまま数日間保存し、お湯をかけて溶かし、水を絞ってから乾燥して仕上げる方法へと改良し「高野豆腐」と呼ばれるようになりました。保存がきく貴重な栄養源として、高野山信仰が厚い関西を中心に広がっていきました。
一方信州や東北地方では、冬の寒い時期に豆腐を薄く切り、屋外に干して凍らせて水分を抜く作業を繰り返すことによってつくる「凍(しみ)豆腐」が農家の保存食や戦国武将の兵糧食として利用されていたそうです。
明治時代になると機械が導入され、高野豆腐は工場でつくられるようになりました。天候に左右されずとも均一に大量につくることが可能になり、高野豆腐の生産量・消費量は伸びていき全国で食べられるようになりました。現在では9割以上が長野県で生産されているといいます。
さらに、弘法大師空海が中国から携帯非常食として持ち帰ったという説や、覚海尊師 (かくかいそんし)によってつくり方が伝わったという説などもありますが、いずれにせよ高野豆腐は偶然から生まれた製法である、と思うと親しみが湧いてくるようですね。
さて、高野豆腐といえば煮物のイメージが強いですが、お肉と一緒に炒めたり、汁物や和え物に加えたりとアレンジ次第で料理の幅を広げてくれる食材の一つだと思います。
長く保存もできますし「たんぱく質が足りないときのもう一品」としてぜひ活用してみてくださいね。
秋の風情とともに高野豆腐の奥行きを味わいながら、夏の疲れをほぐしていきましょう。
〈参考文献〉
高根恭子
うつわ屋 店主・ライター
神奈川県出身、2019年に奈良市へ移住。
好きな季節は、春。梅や桜が咲いて外を散歩するのが楽しくなることと、誕生日が3月なので、毎年春を迎えることがうれしくて待ち遠しいです。奈良県生駒市高山町で「暮らしとうつわのお店 草々」をやっています。好きなものは、うつわ集め、あんこ(特に豆大福!)です。畑で野菜を育てています。
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