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ウコンと鬱金の違い

旬のもの 2024.11.29

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もうすぐ12月、街にはクリスマスの装飾がみられ、イルミネーションもちらほら点灯されています。そろそろ年末の気配を感じられ、忘年会シーズンも近づいてまいりました。これからお酒を飲む機会も増えますが、そんなとき「ウコン」が強い味方!という方も少なくないでしょう。確かに悪酔いしないと僕も思います。ただ、少し気になるのは、中医学が指す“鬱金”と、一般的によく見る“ウコン”はちょっと違うものだということです。

「ウコン」と「鬱金」の違い

中医学で用いられる生薬の「鬱金」は、ショウガ科に属する姜黄や鬱金(主にハルウコンと呼ばれる)の塊根を乾燥させたものを指します。これらは、それぞれ「黄鬱金」「川鬱金」と区別されていますが、基本的な効能はほぼ同じです。川鬱金は作用がやや穏やかで、血を巡らせつつ体力を消耗しない特徴があり、虚弱体質の方にも適しています。

鬱金の性質は涼性または寒性で、体内にこもった“熱”(炎症や興奮)を冷ます作用があります。五味は辛味と苦味を持ち、発汗作用があるとされます。薬膳で辛味は気・血・津液を巡らせ、苦味は排泄を促し、余分な水分を除去すると考えられています。作用する臓腑は、心・肺・肝経です。

鬱金の中医学的な効能には以下のものが含まれます:

1. 活血止痛(血行促進と痛みの緩和)
2. 行気解鬱(気の巡りを改善し、鬱状態を和らげる)
3. 清熱涼血止血(熱を冷まし、止血作用をもたらす)
4. 清心開竅(心の熱を冷まし、意識をはっきりさせる)
5. 利胆退黄(胆汁の流れを促し、黄疸を改善)

臨床では、気の巡りの停滞による胸や脇の張りや痛み、肝機能障害、腎結石の痛み、瘀血による月経痛(特に胸の張りを伴う月経前の痛み)、狂躁状態の緩和に用いられるとされ、肝臓・胆嚢・胃腸・脳・血管・心臓・肺・泌尿器・婦人科系疾患など、幅広い用途があります。

一方、日本で一般的に「ウコン」と呼ばれるものは、中医学では「姜黄」とされます。姜黄はショウガ科の姜黄または鬱金の根茎を乾燥させたもので、味は苦味と辛味、性質は温性で、身体を温める作用があります。作用する臓腑は脾と肝経です。

姜黄の効能としては、活血行気、通経止痛、祛風(風寒を除去)があります。臨床では、雨天時や湿度の高いときに起こりやすい痛み、肩関節の痛み、冷えによる子宮の循環不良に基づく月経痛などに使用されています。

姜黄と鬱金の違い

姜黄と鬱金の違いは、「塊根」を指しているか「根茎」を指しているかによるもので、どちらも同じ植物に由来します。しかし、この点について誤解している専門家も少なくありません。同じ植物ですが、使われる部位が異なるのです。日本で「ウコン」と呼ばれるものと、漢方薬として使われる「鬱金」は、植物自体は同一でありながら、その性質に違いがあります。なかでも鬱金は寒性で、姜黄は温性という点が重要です。

特にお酒の席では、涼性・寒性の鬱金のほうが、体を温めるお酒との相性が良いと考えられます。日本で流通する「ウコン」は温性の姜黄が多いため、目的に応じて使い分けると良いでしょう。

お酒の席におすすめのその他生薬

漢方家として個人的におすすめするのは、「田七人参(でんしちにんじん)」です。これはウコギ科の三七人参の根を乾燥させたもので、「止血の神薬」とも呼ばれる優れた止血作用を持つ生薬です。打撲・捻挫・炎症・吐血・不正出血・月経過多・血液疾患など、さまざまな出血に用いられます。

また、基礎研究では肝機能保護作用が確認されており、抗ウイルス作用、冠状動脈拡張作用、脂肪細胞活性化による肥満抑制作用、免疫機能向上作用も報告されています。
肝臓でアルコールを代謝する際、肝機能を守る田七人参は特に効果的です。

これから増える飲み会のお供に、鬱金よりも田七人参をおすすめしたいですね。

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櫻井大典

国際中医専門員・漢方専門家
北海道出身。好きな季節は、雪がふる冬。真っ白な世界、匂いも音も感じない世界が好きです。冬は雪があったほうが好きです。SNSにて日々発信される優しくわかりやすい養生情報は、これまでの漢方のイメージを払拭し、老若男女を問わず人気に。著書『まいにち漢方 体と心をいたわる365のコツ』 (ナツメ社)、『つぶやき養生』(幻冬舎)など。

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