こんにちは。科学ジャーナリストの柴田佳秀です。
日本の3月は、卒業や転職などのお別れのシーズンですね。美しい姿で私たちの目を楽しませてくれた公園の池のカモたちも、そろそろ北の繁殖地へ旅立つ時期でこちらもお別れの季節。今回紹介するマガモもそんな鳥の一つです。

マガモは、大きさが60cmほどの大型のカモの仲間です。日本で越冬するカモのなかで最も個体数が多く、2024年1月の調査では、全国で約41万羽が越冬。 次に多いのがカルガモの20万羽ですから、圧倒的にマガモが多いことがわかります。ですから、カモ中のカモ、カモの代表選手という意味で、真鴨という名前がつけられています。世界的には北半球に広く分布し、ヨーロッパや北アメリカ、アジアの各地で、日本と同じように普通に見られるカモとして親しまれ、絵画などにもよく描かれています。

そんなごく普通のカモですが、オスの色彩は、見る角度によって緑や青に変わるメタリックな頭の色と鮮やかな黄色い嘴、一見灰色に見える細かい縞模様が描かれている体など、日本の鳥の中ではトップレベルの美麗種なのではと私は思うのです。

一番の特徴である頭の色から、室町時代には「あおくび」という名前で呼ばれていて、江戸時代になって、マガモと呼ばれるようになったといいます。ただ、昭和になってもあおくびと呼んでいる地方もあったそうです。一方、メスは別の鳥と思えるほどオスとは色彩が違う茶色い地味な鳥。これはカモにはよくあるケースなのですが、メスは卵を温めるために地面の巣に座ってじっとしている時間が長く、天敵に見つかりにくいようにカモフラージュ効果のある地味な羽色になっているのです。

さて、マガモは代表的な日本で越冬するカモと前述しましたが、もしかしたら北海道の方はそうなの?と思うかもしれません。というのも、北海道ではマガモは一年中見られるからです。
たとえば、札幌の公園の池では繁殖していて、可愛いヒナを連れた親子を見ることができ、本州のカルガモみたいな存在なんです。また、本州でも上高地などの中部以北の高い山の湿地では繁殖していて、所変わればと言ったところでしょうか。ただ、全体的に見れば圧倒的に冬に日本へ渡ってくる個体が多く、極東ロシアの広大なシベリアで子育てをしています。

マガモは、公園の池はもちろん、大きな湖や海など、じつに様々なタイプの水辺で見ることができますが、特に多く見られるのは、木々で囲まれた森の中にある湖や池。水面にたくさんのマガモがぷかぷかと浮いていて、あちこちに緑に輝くオスの頭の色が見えてとてもきれいです。

そんな池にいるマガモは、昼間はたいてい寝ています。天敵の猛禽類が襲って来にくい安全な森の池で寝て、あたりが暗くなると水田に飛んでいって落ち籾などを食べているのです。また、マガモはドングリが大好物。森の池の周りには、そのドングリがたくさん落ちているので、昼間でも安全が確かめられれば、岸に上がって食べることもあります。

最後に、アヒルっていますよね。白くて嘴が黄色いあの鳥です。そのアヒルは元々はこのマガモなんです。昔、中国やヨーロッパなどでマガモを飼い慣らし、家禽として品種改良したのがアヒルで、現在では様々な品種がつくられています。ですから、アヒルもマガモも種としては同じなのです。

因みにマガモのオスには、クルッと上向きにカールした尾羽があるのですが、じつはアヒルのオスにもあり、このことからもアヒルがマガモから作り出されたことがわかります。もし、アヒルを見る機会があったら、カールした尾羽があるか確認してみてください。オスならば見つかるはずですから。
写真提供:柴田佳秀

柴田佳秀
科学ジャーナリスト・サイエンスライター
東京都出身、千葉県在住。元テレビ自然番組ディレクター。
野鳥観察は小学生からで大学では昆虫学を専攻。鳥類が得意だが生きものならばジャンルは問わない。
冬鳥が続々とやってくる秋が好き。日本鳥学会会員。
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