こんにちは。和菓子文化研究家のせせなおこです。
小さい頃は食べられなかったのに大人になったら不思議と食べられるようになった食べ物、みなさんもありますか?
私にとっては、今回の主役「あくまき」がそれにあたります。あくまきは鹿児島の伝統菓子で、ご存知ない方も多いかもしれません。竹の皮にもち米を詰めて、それを灰汁(あく)で煮て作ることから「あくまき」という名前がつけられました。
祖父が鹿児島の出身だったこともあり、小さい頃からよく目にしていたあくまき。しかし、初めて見た時は竹の葉っぱに包まれた得体の知れない正体に怯えていました。さらに、竹の皮をむいても、出てくるのはやはり茶色い物体。
「もちもちしておいしいよ?きな粉をつけて食べなさい。」
とおじいちゃんにすすめられ、もちもちという言葉に負けた私は一口だけ食べてみることに。しかし!!口に近づけるとはじめて嗅ぐ独特の灰汁の香りにびっくり。口に入れるとその香りが一気に広がり、なんとも言えない気持ちに…。「こ、これはなんだ!?」と本当に驚いたのを覚えています。
あくまきは、鹿児島や南九州で端午の節句の時期に食べられる季節の味。なんとその誕生は関ヶ原の戦いまで遡ります!薩摩の武将・島津義弘が兵糧として持参したと伝えられ、日持ちがして、腹持ちもいいことから薩摩では戦の携帯食として重宝され、西郷隆盛も食べていたといわれています。
そんなわけで、鹿児島ではあくまきのことを「ちまき」と呼び、男の子がたくましく育つように願いを込めて、端午の節句のお菓子としても食べられています。
以前鹿児島に住んでいた時のこと。鹿児島では4月下旬になると、スーパーの入り口には”あくまきコーナー”が併設されます。もち米に竹の皮、そして灰汁。灰汁が売られる光景を初めて目にしました。田舎の方では、このあくまき作りのためにわざわざ木を燃やして灰作りから行われるそうです。さらに、あくまきはもち米を竹の皮に包んで茹でるので、硬さ加減を見極めるのは至難の業なのだとか!
初めて出会ったときは、その独特な風味に驚き戸惑いましたが、あくまきを通して「食べ物には、まだ知らない物語や文化がたくさんあるんだ」と気づかされました。
小さい頃は食べられなかったのに、大人になったら不思議と食べられるようになった食べ物。きっと味覚が変化するということもありますが、今はどこかやさしく、懐かしく感じられるようになるのは、日々の暮らしの中で積み重なった思い出や時間が、あの味にそっと寄り添ってくれるようになったからなのかもしれません。
写真提供:せせなおこ

