こんにちは。巫女ライターの紺野うみです。
5月に入りますと、目に映る木々や草花の緑は、さらに瑞々しく生き生きと輝いているように見えます。
そんな頃、各地の田んぼにはいよいよ水が張られ、透き通った水の中に規則正しく苗が並ぶ、田植えが行われていきます。

この時期の田んぼを、早苗(田植えの時の苗)が植えられたばかりという意味で「早苗田(さなえだ)」と呼ぶことをご存知でしょうか。
この言葉は夏の季語にもなっていますが、まさしく田植えが終えられたこの時期にしか見られない光景を、一言で表現しています。
まだ小さくて可愛らしい苗が植えられた早苗田は、水の中がよく見通せるために周りの景色が鏡のように映し出され、水鏡になった美しい光景となるのが特徴です。
言葉を耳にするだけでも、水面に景色が反射した美しい風景を想像することができるのではないでしょうか。

水面に並ぶ稲には、これからすくすく伸びて豊かな稲穂にならんとする生命力が宿っていて、この苗たちを囲むすべての自然がその成長を見守っているかのようにも思えます。
考えてみれば、太陽の光、豊かな水や土、穏やかな風など、田んぼというのは自然のあたたかな恵みをぎゅっと集約したかのような場所ですよね。
水鏡に映し出された自然の力は、月日をかけて、私たちに生きる力をくれる美味しいお米を育ててくれるのです。そう思うと早苗田は、なんて尊い光景なのでしょうか。
そういえば、まだ「鏡」というものが誕生する前の時代を生きていた人々は、自らの姿を水に映して見ていたと言います。
これを「水鏡(みかがみ)」とも言うのですが、この言葉は、水が物体の姿を歪めずに映し出すのと同じように、物事をありのままに見つめて真実を理解することや、澄んだ水のように自分自身も清廉であるという意味も含んでいます。

神社でもご神体が鏡であることが多いですが、それは神様の前に立つことが、そのまま自分自身の心を透明に映し出すということを表現しているとも言われています。
私たち人間も、自分の姿を水鏡に映し出したように見つめなおしながら、早苗田に植えられた「玉苗(たまなえ=瑞々しく美しい稲の苗を称えた言葉)」のように、日々成長していきたいものです。

このひとときの美しい景色を、皆様もどこかで目にすることができるでしょうか?
早苗田を見ることができたときには、まだまだ小さな玉苗の成長を祈りつつ、私たちも日々受け取り続けている自然の恵みに、そっと感謝していただければと思います。

紺野うみ
巫女ライター・神職見習い
東京出身、東京在住。好きな季節は、春。生き物たちが元気に動き出す、希望の季節。好きなことは、ものを書くこと、神社めぐり、自然散策。専門分野は神社・神道・生き方・心・自己分析に関する執筆活動。平日はライター、休日は巫女として神社で奉職中。
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