こんにちは。気象予報士の今井明子です。
日の出頃に早起きをすると、もしかしたら東の空が鮮やかに色づく「朝焼け」が見られるかもしれません。
朝焼けは、夕焼けと同じ仕組みで空が赤やオレンジ色に色づきます。
太陽の光は、そもそも赤から紫まで、さまざまな波長の光が混ざって白い色をしているのですが、大気中を通過するときに、大気中の空気分子にぶつかって散乱します。このとき、短い波長の青色が強く散乱されるため、空は青く見えます。
ところが、朝や夕方は太陽の高度が低いため、大気中を通る距離が長くなります。すると、波長の短い青色はすでに散乱されて減衰し、太陽の光が人の目に届くころには結局赤やオレンジ色などの波長の長い光しか残らなくなってしまいます。それで、朝焼けや夕焼けは空が赤やオレンジ色に色づくのです。
さて、朝焼けは俳句では夏の季語です。朝焼けなど、1年中見られそうなものですが、なぜ夏の季語なのかというと、夏が最も朝焼けが鮮やかに見られるからだそうです。
これはなぜなのでしょうか。はっきりとしたことはわかりませんが、私は夏の空気には水蒸気が多く含まれているからではないかと考えます。
先ほど、太陽光線は空気分子で散乱されるといいましたが、水蒸気も空気を構成している気体のひとつです。大気中の水蒸気量が多いと、オレンジ色の光も散乱され、赤い光しか残らなくなるため、空は深紅に染まるのです。それで夏の朝焼けが印象的なのかもしれません。
「朝焼けは雨」ということわざもあります。美しい朝焼けが見られるということは空気中の水蒸気量が多く、かつ東の空に雲がないということです。このとき、西から低気圧が近づいてきています。それで「朝焼けは雨」なのです。とはいえ、このことわざが当たるのは天気が西から東へと移ろう春や秋であることが多いです。もちろん、夏でも西から台風が近づいているときは、このことわざが当たるかもしれませんね。

今井明子
サイエンスライター・気象予報士
兵庫県出身、神奈川県在住。好きな季節はアウトドア・行楽シーズンまっさかりの初夏。大学時代はフィギュアスケート部に所属。鯉のいる池やレトロ建築をめぐって旅行・散歩するのが好き。
