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きゅうりとタコの酢のもの

旬のもの 2025.07.13

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こんにちは、料理人の庄本彩美です。今日は「きゅうりとタコの酢のもの」のおはなしです。

茹だるような日本の夏。食欲が落ちやすい季節がやってきたが、なぜか箸が進む一品が私にはある。それは、きゅうりとタコの酢のものだ。

私の実家では夏になると、それはもう驚くほど大量のきゅうりが収穫できた。青々と茂る葉の間からきゅうりを探すのは意外と難しく、体をひねって様々な角度からきゅうりを見つけ出していたのを思い出す。
母は毎日、きゅうりを実に様々な料理に仕立てていった。漬物、サラダ、そして夏の食卓に欠かせなかったのが、このきゅうりとタコの酢のものだった。

大学進学を機に一人暮らしを始めたころ、スーパーでタコを見つけ、実家の酢のものを思い出し、食べたくなった。
京都の夏は、想像していた以上に暑い。「私もこの暑さで茹であがりそう…」なんて思いつつ、小さなパックに入ったタコを買って帰った。

茹でダコをサッと洗い、一口大に切る。きゅうりを小口切りにして軽く塩揉みしたら、タコと和えるだけ。なんて簡単なのだろう。
母は自家製の三杯酢を作って常備し、それを酢の物に使っていた。「母さんのレシピは分からないけど、とりあえず適当に作ってみるか…」と勢いで醤油とみりんと酢で調合してみると、思いの外、母の味を上手く再現できた。

きゅうりは最も栄養素のない食材と言われることもあるが、水分補給や、むくみ解消、夏バテ予防など、夏の私たちの体を多方面からサポートしてくれる。そんなきゅうりのシャキシャキと、ぶりっとしたタコの歯応えが、良い。噛めば噛むほど、夏の暑さのストレスを払拭してくれるかのようだ。そして、お酢の酸味が身体を駆け抜け、疲れが少し取れたような気がした。

上手くできたのはよかったのだが、きゅうり1本とタコを全部使って作ると、一人では食べ切れない量が出来上がってしまった。
「こんなに簡単で沢山出来て、食べ応えがあるんだから、大人数だった私の家では、お助けレシピだったろうなぁ」
一人暮らしをして初めて、毎日家族の為に料理をしてくれていた母の有り難みに気がつく瞬間でもあった。

その後、なかなか食べ切れない量の物は買う頻度が減り、タコは日々の買い物リストから外れてしまっていた。
そして結婚して家族が増えた今、気がつけば私もスーパーでタコを手に取る機会が増えていた。
2人暮しの時は、凝った料理を作るのが楽しかった。しかし、子育てが始まってからは、さっと作れて、食べ応えがあり、作り置きしておいても美味しいレシピに助けられている。
きゅうりとタコの酢のものが、我が家の夏の定番として蘇ったのだ。

今年もとても暑そうだ。採れたてのきゅうりや、スーパーで手軽に手に入るタコを使って、「夏の味」を楽しんでみてほしい。きっとこの夏を元気に乗り切る、頼もしい味方になってくれるに違いない。

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庄本彩美

料理家・「円卓」主宰
山口県出身、京都府在住。好きな季節は初夏。自分が生まれた季節なので。看護師の経験を経て、料理への関心を深める。京都で「料理から季節を感じて暮らす」をコンセプトに、お弁当作成やケータリング、味噌作りなど手しごとの会を行う。野菜の力を引き出すような料理を心がけています。

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