こんにちは。気象予報士の今井明子です。
いよいよ9月。まだ残暑は厳しい日もありますが、季節は確実に移ろっています。
秋といえば台風ですが、意外なことに竜巻の季節でもあります。
実は、竜巻の発生数が1年で最も多いのは9月です。日本では台風の影響で竜巻が発生しやすいです。台風の東側に大量の水蒸気が流れ込み、活発な積乱雲(雷雲)が発生しやすくなるからです。竜巻は、積乱雲から発生するのです。
竜巻は、地上付近にあった弱い渦巻きが、積乱雲の強い上昇気流によって引き延ばされることで発生します。上に引き伸ばされると、渦巻きの半径が小さくなり、渦が強くなります。フィギュアスケートの選手がスピンをするとき、手足を縮めて細くなると回転が速くなるのと同じしくみです。
竜巻は突然発生し、平均で100mの幅×3km程度の距離でまわりの建物を壊しながら走り抜け、数分から十数分で消えてしまいます。ひとたび発生するとその被害はとても大きいのですが、寿命が短く、局所的な現象なので、時間と場所を指定して予報することが非常に難しいです。
予報どころか、竜巻が今まさに発生している瞬間を目撃することすら難しいです。竜巻が発生したかどうかわかるのは、竜巻が発生した後のこと。気象庁の職員が突風の被害のあった場所に足を運んで調査したうえで、「竜巻が発生したとみられる」という形で発表します。
竜巻は平野部で発生しやすいため、山がちな日本ではあまり竜巻のニュースを耳にしません。竜巻大国なのは広大な平原のあるアメリカで、竜巻の規模は日本よりも大きく、発生数も被害もけた違いです。アメリカには竜巻から身を守るためのシェルターもあります。日本は地震大国ですが、アメリカは日本とはまた違った天災の苦労があるのだと思い知らされます。

今井明子
サイエンスライター・気象予報士
兵庫県出身、神奈川県在住。好きな季節はアウトドア・行楽シーズンまっさかりの初夏。大学時代はフィギュアスケート部に所属。鯉のいる池やレトロ建築をめぐって旅行・散歩するのが好き。
