こんにちは、料理人の庄本彩美です。今日は「銀杏ご飯」のお話です。
社会人になりたてのころ、週末の夜は友人との家飲みが定番だった。
料理好きで、少し凝った料理をするのが好きな私たち。あれこれと試すのが楽しみだった。
「今日は何作ろっか?」と尋ねると、「この前のお店で食べた、銀杏とかどう?」と友人。先日、知り合いの小料理屋で食べた、炙り銀杏を思い出し、早速スーパーへ。
実家ではほとんど出ることのなかった銀杏。まずはこの硬い殻を割る必要があると知り、家にあったペンチを取り出した。しかしペンチが小さかったようで、うまく挟めずツルツル逃げてしまう。
力加減も難しい。いくつか、細かい殻がバキッと実に突き刺さってしまった。それでも何度か試すうちに、徐々にコツを掴んできた。
次は炒る作業。電子レンジ、フライパン、鍋で茹でる方法などがあるようだ。
「お店では炒り器でやってたよね」「一番近いのは、フライパンかなぁ?」
私たちはフライパンを使ってみることにした。フライパンを火にかけて銀杏を入れると、カラカラと音を立てて踊り出す。その音を聞きながら「なんか、いい時間だね」と二人で笑う。
しばらく炒っていると、殻が黒く焦げてきた。「中は全部火が通ってるのかな?」「もう少し火にかけてて大丈夫かな?」心配になりつつ、様子を見守る。徐々に殻の割れ目が開いて、銀杏の良い香りが立ってきた。
アツアツの銀杏をむいてみると、薄皮がぺったりとくっついている。「これも剥がさないといけないよね」。やや面倒に感じつつも、ペリペリと地道に作業をすすめる。殻が中に食い込んでいたり、火の通りがまばらだったり、なかなか綺麗にはいかない。それでも、一つ一つの銀杏が愛おしく感じられた。
食べたい気持ちを我慢して、お米と一緒に銀杏を炊飯器に入れて炊き上げる。出来上がって蓋を開けると、ふっくらとした翡翠色の実が、白米の隙間から顔をのぞかせていた。
「わぁ…きれい…」
食卓に銀杏ご飯を並べ、早速いただく。口に運ぶと、最初はもちっとした弾力があり、噛むほどにねっとりとした舌触りに変わる。ほんのり青々しい香りもあれば、ナッツのようなコクも口の中に広がる。後から独特のほろ苦さもじんわりと追いかけてくる。
この小さな実の中には、様々な味わいが詰まっていた。
「新米とすごく合うね」「少し手間だけど、年に1回くらいは食べたいね」
私たちは銀杏ご飯で、秋の味覚をふくふくと味わったのだった。
深まる秋の食卓に、温かい銀杏ご飯はいかがだろうか。その手間暇をかける時間もまた、ごちそうになるはずだ。

庄本彩美
料理家・「円卓」主宰
山口県出身、京都府在住。好きな季節は初夏。自分が生まれた季節なので。看護師の経験を経て、料理への関心を深める。京都で「料理から季節を感じて暮らす」をコンセプトに、お弁当作成やケータリング、味噌作りなど手しごとの会を行う。野菜の力を引き出すような料理を心がけています。
