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オオタカ

旬のもの 2025.12.04

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12月になると池にはカモたちが勢ぞろいし、観察がますます楽しい季節になります。先日も近所の池で美しいカモたちを眺めながら、ゆったりとした時間を楽しみました。暖かい日差しのなか、水面でのんびりと浮かぶカモを見ていると、本当に幸せな気分になります。

しかし、そんな静けさが突然破られることがあります。オオタカが姿を現す瞬間です。

カモはオオタカにとって格好の獲物で、多くのカモが集まる池は重要な狩り場。まるで吸い寄せられるかのようにそこへ飛来してくるのです。こうした理由から、冬の池ではオオタカと出会える機会がぐっと増え、まさに今が“旬”といってよい時期でしょう。

オオタカは北半球に広く分布するタカで、九州以北の森や農耕地、公園などで一年を通して見られる留鳥です。大きさはオスが50cm、メスが59cmと、メスの方が一回り大きく、これは多くのタカやワシで見られる傾向です。名前は読んで字のごとく大きなタカという意味で、同じ仲間のハイタカやツミよりも大きいことが由来とされます。また、背中が青みがかった灰色をしていることから「蒼鷹(あおたか)」という別名もあります。

姿は正に“ザ・タカ”という風格。黒い顔に白い眉、キリリと締まった黄色い虹彩の鋭いまなざし、細かな横縞の胸、どこを見ても気品と精悍さを兼ね備えた端正な姿です。さらに、意外と目をひく黄色い脚には、弧を描くように曲がった黒く鋭い爪が光ります。オオタカの主な獲物は鳥なので、カモやハトなど飛んでいる鳥を追いかけて、この鋭い爪でつかんで仕留めてしまうのです。

オオタカといえば、山深い森にひっそりと棲むイメージがあるかもしれません。しかし実際には、人里の森にくらす鳥なんです。森と田畑が点在する景観は、彼らにとって理想的な住環境。また、近年では都市部の広めの樹林公園などでも営巣する例が増えています。そんな都会暮らしのオオタカは、街にたくさんいるドバトが主な獲物。猛禽類と聞くと孤高の存在を思い浮かべがちですが、意外と柔軟な思考の持ち主なのかもしれません。

私にとってオオタカは、特別な思い入れがある鳥。というのも、この鳥のために大学受験を失敗し、浪人することになったからです。

私が高校時代にフィールドとしていた、東京と埼玉にまたがる狭山丘陵は、オオタカの繁殖地として知られていて、毎年ヒナが誕生していました。ところが、あるときから密猟者によってヒナが持ち去られてしまう事件が発生。そこで有志がテントを張って24時間態勢で監視をすることになったのです。その活動に私も参加。それが高校3年生の春から夏の時期だったため、勉強が疎かになり受験は見事に失敗してしまいました。

とはいえ、今振り返れば、この経験は他には代えがたい貴重な時間で、現在の私にとって大切な財産となっています。そして、そのきっかけを与えてくれたのが、ほかならぬオオタカだったのです。

写真提供:柴田佳秀

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柴田佳秀

科学ジャーナリスト・サイエンスライター
東京都出身、千葉県在住。元テレビ自然番組ディレクター。
野鳥観察は小学生からで大学では昆虫学を専攻。鳥類が得意だが生きものならばジャンルは問わない。
冬鳥が続々とやってくる秋が好き。日本鳥学会会員。

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