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コクマルガラス

旬のもの 2025.12.19

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こんにちは。科学ジャーナリストの柴田佳秀です

以前このエッセイで、“旅ガラス”として知られるミヤマガラスのお話をしました。10月ごろになると大陸から日本へ渡ってきて冬を越すカラスで、稲刈り後の水田に大きな群れをつくる姿をご紹介しました。今回取り上げるコクマルガラスも、じつはそのミヤマガラスと同じく“旅ガラス”。まさに今の季節に、日本で姿を見ることができる渡り鳥のカラスです。

成鳥のペア

コクマルガラスは大きさ33cm。ちょうどハトくらいの大きさでカラスとしては小型です。一般にカラス=真っ黒というイメージがありますが、本種は白黒のツートンカラーで、見た目がとてもユニーク。また、体全体が真っ黒なタイプもいますが、これは幼鳥で、成鳥になると白黒の姿になると考えられています。

黒い幼鳥

コクマルガラスは、夏はモンゴルや中国東北部、ロシアのアムール川流域といった北の大地で繁殖し、冬になると中国東部、朝鮮半島、日本へと旅するまさに旅ガラスです。

ミヤマガラスの群れにまざるコクマルガラス

日本では北海道から九州まで広く記録がありますが、実際に出会えるかどうかは“案外ピンポイント”。というのも、コクマルガラスはほとんどの場合、ミヤマガラスの大きな群れに数羽だけまざっていて、自分たちだけで大群になることはまずありません。つまり、まずミヤマガラスの群れを見つけ、その中からコクマルガラスを“探し当てる”という、ちょっとした宝探しのようです。

ところが、ここで問題がひとつ。ミヤマガラスの群れは、ときに千羽近くにもなる超大所帯。そんな黒い海の中から数羽のコクマルガラスを見つけ出すとなると、気が遠くなることもしばしばです。

実は突破口があります。それが鳴き声。コクマルガラスは「キュン、キュン」と聞こえる、なんともカラスらしからぬ可愛らしい声で鳴くのです。しかも意外とよく鳴くので、群れの中にいれば、この声がちゃんと耳に届きます。私もこの“耳で探す”方法に気づいてからは、コクマルガラス探しにあまり苦労しなくなりました。

ミヤマガラスとコクマルガラス

「白黒の成鳥なら目立つし、見つけるのは簡単なのでは?」と思うかもしれません。しかし、白黒タイプの成鳥は少なく、たいていは黒い幼鳥ばかり。だからこそ、たくさんのカラスの中から白黒の成鳥を見つけると、とても嬉しくなるものです。バードウォッチャーは、白黒の成鳥を「シロマル」という愛称で呼び、「今日はシロマルがいたよ」なんて、仲間に自慢することもあります。

また、かつてコクマルガラスは、九州に行かないと見られない鳥でもありました。現在は、ミヤマガラスの越冬地が全国に広がったのと共に、コクマルガラスも各地で見られるようになりました。私自身、大学生の時にツルの渡来地として有名な鹿児島県出水平野で初めて白黒のコクマルガラスを見たときの喜びは、今でも昨日のことのように覚えています。

さて、私にはコクマルガラスにまつわる忘れられないエピソードがあります。それはテレビのロケで九州の宮崎を訪れたときのこと。「カラスのねぐらがあって、うるさくて不気味なので追い払ってほしい」という視聴者の相談に答える番組で、私はカラスの専門家として現地に向かいました。調べてみると、その場所はミヤマガラスとコクマルガラスのねぐらでした。相談者の女子高校生に「ここにいるのは白黒のこんな可愛らしいカラスなんですよ」と説明したところ、「えー!、こんなカラスならば追い払わなくてもいい」と言い出したのです。その結果、カラスは追い出されることなく、そのまま残されることになりました。

“外見で判断してはいけない”とはよく言われますが、このとき私は、人にとって見た目の印象がどれほど大きいのかしみじみ実感しました。

写真提供:柴田佳秀

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柴田佳秀

科学ジャーナリスト・サイエンスライター
東京都出身、千葉県在住。元テレビ自然番組ディレクター。
野鳥観察は小学生からで大学では昆虫学を専攻。鳥類が得意だが生きものならばジャンルは問わない。
冬鳥が続々とやってくる秋が好き。日本鳥学会会員。

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