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セツブンソウ

旬のもの 2026.01.28

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こんにちは。森乃おとです。

2026年の節分は2月3日。冬から春へと季節が移り変わり、四季が新しくはじまる立春の前日にあたり、鬼を払い無病息災を祈ります。その時期に、透明感のある白く可憐な花を咲かせるのが「セツブンソウ(節分草)」。春の訪れを告げる花として、古来愛されてきました。

林床に咲く「春のプリンセス」

キンポウゲ科セツブンソウ属の球根性多年草で、本州の関東以西に分布する日本固有種。石灰質の土壌や半日陰の涼しい場所を好み、落葉広葉樹林の林床に生育します。

さて、冬から早春にかけての短いひととき、落葉した林内に差し込む太陽の光を受けて、地表を覆いつくすように花を咲かせる植物群があります。“春植物”=スプリング・エフェメラル(春の儚い命)、あるいは「春の妖精」と呼ばれ、セツブンソウはその一つです。

和名は、立春前日の節分の頃に咲くことに由来。学名はEranthis pinnatifida(エランティス・ピンナティフィダ)。属名の「Eranthis」は、ラテン語で「春の花」という意味です。
ほかにも「春の妖精」の仲間には、ユリ科のカタクリ(片栗)やキンポウゲ科のイチリンソウ(一輪草)、ニリンソウ(二輪草)などがあります。いずれも春先に花を咲かせ、初夏には、地上から姿を消してしまいます。

セツブンソウは「春を告げる花」「春のプリンセス」と称され、人気の高い植物です。しかし現在、環境変化などにより自生数は年々減少し、準絶滅危惧種に指定。各地で保全活動が行われており、栃木・埼玉・兵庫・広島・山口などの群生地が有名です。

儚くもしたたかな戦略家

セツブンソウの開花期は、一般的には2~3月にかけて。地域や気候条件によって前後しますが、その名のとおり、冬から春の季節の分かれ目の頃に花を咲かせます。
地下にある球形の塊茎(かいけい)から、5〜15㎝の茎を数本伸ばし、茎先端の総苞葉(そうほうよう)は線形片に不規則に分裂。その中心から長さ1cmほどの花柄を出し、径約2㎝の花を1個つけます。総苞葉とは、花を保護するために特殊化した葉のことです。

根ぎわから生える葉は、長い柄のある5角形。3つに裂けたものが2つに裂け、さらに羽状に細かく裂けています。ちなみに種小名の「pinnatifida」は羽状中裂を意味します。
白色の花弁のように見えるのは萼片で、通常5~7枚。本当の花弁は退化しており、糸のようにYの字状に分かれ、先端に黄色い蜜腺(ネクター)をつけます。雄しべは多数あり、先端の花粉が入った葯(やく)は淡い紫色。蜜腺と雄しべは、2~5個のくすんだ桃色の雌しべを囲み、白地に黄と紫がアクセントとなり、よく目立ちます。

早くも3~4月には結実し、5月、木々が芽吹いて林床が再び暗くなる頃には種子を散布します。そして地上部を枯らして地下の塊茎に栄養分を貯め、翌年の2月まで長い休眠期間に入るのです。

セツブンソウの生存戦略は、短い期間に開花と繁殖を終え、速やかに地上から撤退して地下で力を蓄えながら、次の春を待つこと。他の植物がまだ活動していない早春だからこそ、太陽の光を存分に浴び、蜜を分泌して虫を呼び、あるいは花粉を風に飛ばして受粉することができるのです。美しく儚い花でありながら、したたかで逞しい戦略家ともいえるでしょう。

花言葉は「気品・光輝」「微笑み」「人間嫌い」

「気品・光輝」は、蜜腺がまるで王冠のように黄金色に輝くことから。「人間嫌い」の由来は、セツブンソウがアコニチンを含む有毒植物であること。また、節分の日に、「鬼は外! 福は内!」と豆で追い払われる鬼の気持ちになったものという説もあります。
さて、セツブンソウといえば心に浮かぶ俳句があります。

ふたり棲む 節分草を ふやしつゝ――黒田杏子(くろだ・ももこ/1938~2023)

まだ寒さの残る頃に、太陽の光をいっぱいに受けて小さな白い花を開くセツブンソウ。決して華美ではなく、むしろ控えめであるのに、まるで微笑みのように心を明るく照らします。寄り添う「ふたり」の暮らしの中には、辛いことも悲しいこともあるでしょう。それでもセツブンソウが増えていくごとに、「ふたり」の歩む道は優しい光に満たされていくのです。

セツブンソウ(節分草)

学名:Eranthis pinnatifida
英名:Winter aconite

キンポウゲ科セツブンソウ属の球根性多年草で、本州の関東以西に分布する日本固有種。春先に花を咲かせ、初夏には地上から姿を消す「スプリング・エフェメラル(春植物)」の一つ。開花期は2~3月。白色の花弁のように見えるのは萼片。本当の花弁は退化して糸状に分かれ、先端に黄色い蜜腺をつける。栃木・埼玉・兵庫・広島・山口などの群生地が有名。

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森乃おと

俳人
広島県福山市出身。野にある草花や歳時記をこよなく愛好する。好きな季節は、緑が育まれる青い梅雨。そして豊かに結実する秋。著書に『草の辞典』『七十二候のゆうるり歳時記手帖』。『絶滅生物図誌』では文章を担当。2020年3月に『たんぽぽの秘密』を刊行。(すべて雷鳥社刊)

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