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カレイの煮付け

旬のもの 2026.10.26

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こんにちは、料理人の庄本彩美です。今日は「カレイの煮付け」のお話です。

台所から魚を甘辛く煮る香りが漂ってくると、「あ、今日は煮付けだな」と分かった。大体、メバルかカレイ。母の作るカレイの煮付けはとても美味しくて、私の好物の一つだった。
京都に来てからも鮮魚売り場でカレイを見つけたら、母の味を思い出して度々買った。だが、よく売っている「水カレイ」や「エテカレイ」を煮付けてみても、どうも様子が違う。母の作るカレイの身には厚みがあり、モチモチっとした弾力があったような……。

母に聞くと、「それはマコガレイのことかもね」とのこと。瀬戸内でよくとれるのは、穏やかな砂泥底で育つ「マコガレイ」なのだという。「身が薄いカレイは唐揚げにして、厚いのは煮付け向きかな。水カレイもあるけど、一夜干しで焼くと美味しいよ」
京都で見かけるカレイは、一夜干しにして香ばしく焼く文化が根づいている魚が多いそう。

食材の持ち味を生かして創意工夫を凝らせるのが、料理の面白いところ。10月を迎え、秋の深まりとともに店頭に並ぶ日本海側のカレイも、それぞれの良さを引き出して美味しく料理したい。「今ここで食べられるカレイで、美味しい煮付けを作ってみよう!」

水分や脂の多い魚は、一度パラリと塩を振って余分な水分やクセを抜き、熱湯に潜らせてから使う。このひと手間で身がグッと引き締まり、煮汁も濁らずきれいに仕上がる。
鍋に水、酒、みりん、砂糖、スライスした生姜を入れ、火にかける。水は入れすぎないのがポイント。そして煮付けで重宝するのは、やはり地元ならではの「甘口の醤油」だ。
ふつふつと煮立たせ、そこへ水気を切ったカレイをそっと滑り込ませる。

アルミホイルの落とし蓋をぴたりとかぶせ、中火でコトコトと煮含めていく。7〜8分経ったところで蓋を取ると、香ばしさと生姜の清々しい香りが、ふわりと舞った。醤油が魚の脂と混ざり合い、煮汁がきらりと光っている。
カレイを器に移したら、残った煮汁をこってりと煮詰めて後がけするのが私の好みだ。

水カレイなら、水分のおかげで箸を入れるとスッと身が離れ、滑らかさの中にある上品な旨みが広がる。一方のエテカレイは、身がプリッと弾け、特有のゼラチン質が甘辛いタレをよく吸う。脂のコクがしっかりしているので、ピリッと山椒を散らすのもよく合う。「これはこれで絶品だね」と、炊き立ての新米が進む。
地元のマコガレイの旬は春。今はここで出合うカレイの個性を存分に楽しもう。また帰省した時には、母が作ってくれるカレイの煮付けを味わいたいなぁ……と懐かしく思うのだった。

今日も京都の町家の台所から、湯気がふわりと広がる。それぞれの土地の食材や文化が、鍋の中でそっと溶け合っている。食材たちの歓びの声がささやかに聞こえてくるかのような、楽しい秋の夕暮れだ。

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庄本彩美

料理家・「円卓」主宰
山口県出身、京都府在住。好きな季節は初夏。自分が生まれた季節なので。看護師の経験を経て、料理への関心を深める。京都で「料理から季節を感じて暮らす」をコンセプトに、お弁当作成やケータリング、味噌作りなど手しごとの会を行う。野菜の力を引き出すような料理を心がけています。

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