冬枯れの景色の中で、ぽつんと明るく咲く返り花
季節を楽しむ生活に、そっと彩りをくれる花々。このページで紹介する花は、その季節の主役ではないかもしれないけれど、日本の四季がつくる景色に欠かせない大切な存在です。今回は、冬枯れの景色の中で、ぽつんと明るく咲く返り花です。 (文・文中写真:和暦研究家・高月美樹)
返り花は小春日和が続く和暦十月(西暦11月)頃、小さな春を感じてポツリ、ポツリと返り咲く花のことですが、近年は気候変動の影響で全体に温暖化していることもあり、12月に入ってもさまざまな返り花を目にするようになりました。
わが家の周辺では、サクラは終わってしまいましたが、他にもたくさんの返り花が咲いています。このままでは季節が狂ってしまうのではないか、と憂慮する人もいますが、返り花自体は昔からあって人々に愛されてきたものであり、年ごとの気象の様子や異変を教えてくれる大切な存在でもあります。
返り花は日の当たっているところに咲いていることが多いので、遠目にも眩しく、光っているように見えたりします。冬枯れの景色の中で、ぽつんと明るく咲いている花を見つけると心の中でチリンと鈴の音が鳴るような、あたたかい気持ちになります。というわけで、今回は今、うちの周囲に咲いている返り花を紹介します。

ツツジ(躑躅)です。ツツジが並ぶ植え込みの中で咲いているのはこの一輪だけ。不思議ですね。春の盛りにうまく育たなかった花芽が、冬の小春のあたたかさに乗じて咲くことがあるのだそうです。出遅れてもじっとチャンスを待っている、ということでもありますね。それはやはり喜ばしいことなのかもしれません。

こちらは八重咲きのクレマチス、白万重(しろまんえ)。つぼみのときから開花を楽しみにしていました。

こちらも晩春から初夏の花で、ハゴロモジャスミン(羽衣素馨)。

タツナミソウ(立浪草)。白のタツナミソウはまさに波頭ようです。

ちりんと2輪だけ咲いた庭のユキヤナギ(雪柳)。

地面にはシロツメクサ(白詰草)、タンポポ(蒲公英)、ツタバウンラン(蔦葉雲蘭)も。

こちらはムラサキカタバミ(紫片喰)。朝夕の寒い時間は閉じていますが、日中、お天気がよければよく咲いて、冬のミツバチたちの大事な蜜源になっています。

こちらは植木鉢に咲いたナツスミレ(別名、花瓜草)。植えたつもりはありませんが、いつのまにか鉢に入ってきて、冬になってまた咲き出しました。透き通るような美しい紫の花です。

みなさまの周囲では、今、どんな返り花が咲いていますでしょうか。
文責・高月美樹
本文写真・高月美樹