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編集部のつれづれ便り〜秋篇〜

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暦生活編集部がつれづれと綴るお便りを、一週間に一度お届けいたします

空を見上げれば天高く、確かに秋が来たのだと思うこの頃です。
そんな秋の日に、暦生活編集部がつれづれと綴るお便りを、一週間に一度お届けいたします。
まったりひと休みする気持ちで、のんびり読んでいただけますと嬉しいです。

11月6日(木) 秋の上着

芥川の『秋』に加えて、和歌の秋も見逃せません。
四季の中で和歌に多く登場するのは、春と秋です。
日本では古来稲作が大切にされてきたので、それに関わる行事の多い春と秋が特に大切にされたのだそう。
優れた秋の和歌は多くありますが、今日はその中から、肌寒くなってきたこの時期にぴったりの、「秋の上着」にまつわる和歌を二首ご紹介いたします。

朝ぼらけ嵐の山の寒ければ散るもみぢ葉を着ぬ人ぞなき
(朝ぼらけの頃、嵐山は山風が吹いて寒いので、散りかかる紅葉の葉を着ない人はいません)
———藤原公任『公任集』

  朝ぼらけ紅葉の錦見渡せば霧こそ秋の上着なりけれ
(朝ぼらけの頃、紅葉の錦のような山々を見渡せば、霧こそが秋の上着だったのですね)
———『殿上歌合』

散る紅葉が風に吹かれて衣にかかる情景も、それを寒いから紅葉を身にまとうというのも、秋の上着は霧だというのも、なんとも素敵な表現です。
実際に紅葉や霧を上着にすることはできませんが、紅葉色の服を着たり、霧のような柔らかい素材の服を選んだりと、和歌の雰囲気をコーディネートに取り入れてみるのも心ときめくものです。

早くも冬の足音がする晩秋、目一杯お楽しみくださいね。

10月30日(木) 読書の『秋』

10月も末となると、さすがに夜は少々冷えますね。
「〇〇の秋」はいくつもありますが、中でも「読書の秋」は私にとって、なくてはならないもの。

読むジャンルは様々ですが、毎年秋になると必ず思い出す作品に、芥川龍之介の『秋』があります。
二人の姉妹とその従兄をめぐるお話で、繊細な心理描写にいつの間にか引き込まれてしまう、いかにも秋らしく、しっとりとした趣の小説です。

芥川龍之介といえば、『蜘蛛の糸』や『羅生門』、『鼻』、『芋粥』、『地獄変』などの、『今昔物語集』や『宇治拾遺物語』などから題材をとった「王朝もの」が有名ですが、『秋』は芥川が「王朝もの」から転換を図った近代心理小説の、最初の作品だとされています。

「王朝もの」は緻密な構成と洗練されきった文章が見事ですが、『秋』は少し趣が違ってしみじみとした、また別の良さがあります。
そんな『秋』の物語は、このように始まります。

「信子は女子大学にゐた時から、才媛の名声を担つてゐた。彼女が早晩作家として文壇に打つて出る事は、殆誰も疑はなかつた。中には彼女が在学中、既に三百何枚かの自叙伝体小説を書き上げたなどと吹聴して歩くものもあつた。が、学校を卒業して見ると、まだ女学校も出てゐない妹の照子と彼女とを抱へて、後家を立て通して来た母の手前も、さうは我儘を云はれない、複雑な事情もないではなかつた。」

「ないではなかつた」の部分に、一筋縄では表現しないという、隠しきれない芥川らしさが覗いているなと、くすりと笑ってしまいます。
それはさておき、読み進めるうちに、少し寂しくも温かな秋の色合い、頬をふわりと撫でる涼しい秋風を感じることでしょう。
題に違わず秋にぴったりの短編小説で、青空文庫ですぐに読めるので、秋のつれづれのお供にいかがでしょうか。

皆さまも、秋の夜長におすすめの本があったら、ぜひ教えてくださいね。

10月23日(木) 秋の夜長

ここ一週間ほどで、急に肌寒くなったように思います。
急な気温の変化ですが、お身体にお変わりはありませんか。

肌寒くなったと同時に、夕暮れもずいぶん早くなりましたね。
秋分を境に、日に日に夜の時間が長くなってきて、今ではいつの間にか夜に。
「秋の日は釣瓶落とし」とは聞きますけれど、その通りなのだなぁと実感します。

夕暮れを楽しむ間もなく夜になってしまうのは、少し寂しいものですけれど、秋の夜長は毎年楽しみです。
うだるような夏、凍えるような冬と比べると、夜の時間も随分過ごしやすいもの。
しんと静まりかえった暗闇に、窓を開けると月がさやけく照っていて、場所によっては虫の音が聞こえてきます。
清少納言は「秋は夕暮れ」と言いますけれど、秋の夜も中々悪くありません。
周りの自然が舞台背景を整えてくれているようで、音楽を聴いたり、映画を鑑賞したり、夜の散歩に出かけたり、何をするにも風情豊かに感じられます。

今年の夜長、皆さまはどう過ごされますか。
私は大抵本を読んで過ごしています。
また来週、詳しくお話させてくださいね。
朝晩暖かくして、これからの一週間も楽しんでお過ごしくださいませ。

10月16日(木) 季節の移ろい

やっといくらか涼しくなってきたように思いますが、今年は暑い日が随分長く続きましたね。
一体いつになったら秋がやってくるのだろうかと、気を揉みました。
あまりの暑さに、また季節の変わり目に体調を崩されてはいませんか。

どの季節も1日を境に急に変わるのではなく、段々と移り変わるものではありますが、秋は特に小さな移ろいが楽しい季節だなと感じます。
旬の食べ物、生き物の秋支度、それから空模様…。
秋刀魚が並び始めると秋だなぁと思いますし、夏には痩せ細っていた狐の毛皮がもふもふになると秋らしいなぁと思います。

どの季節も1日を境に急に変わるのではなく、段々と移り変わるものではありますが、秋は特に小さな移ろいが楽しい季節だなと感じます。
旬の食べ物、生き物の秋支度、それから空模様…。
秋刀魚が並び始めると秋だなぁと思いますし、夏には痩せ細っていた狐の毛皮がもふもふになると秋らしいなぁと思います。

まだ日中は少し暑さが残る中だからこそ、時折吹くそよ風が嬉しいもの。
色づき始めた紅葉も、うかうかしていると、いつの間にかすっかり秋化粧を終えてしまうことでしょう。
そんな季節の移ろいを、一つ一つ拾い集めるように大切にしたいものですね。

皆さまが見つけた小さな秋も、ぜひ教えてくださいね。
それでは、今年の秋も目一杯楽しんでまいりましょう。

昨今殊に短く感じられる秋、皆さま思い思いに過ごされることかと思います。
皆さまの定番の秋の過ごし方や、お気に入りの時間・もの・こと、ぜひ暦生活SNSで教えてくださいね。
楽しみにお便りをお待ちしております。
それでは、お身体大切に、今年の秋も楽しくお過ごしくださいませ。

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暦生活編集部

日本の季節を楽しむ暮らし「暦生活」。暮らしのなかにある、季節の行事や旬のものを学びながら、毎日お届けしています。日常の季節感を切り取る #暦生活写真部 での投稿も募集中。暦生活の輪を少しずつ広げていきたいと思います。

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