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編集部のつれづれ便り|春

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一週間に一度、お便りをお届けいたします

暦生活編集部がつれづれと綴るお便りを、一週間に一度お届けいたします。
まったりひと休みする気持ちで、のんびり読んでいただけますと嬉しいです。

3月12日(木) いづれか歌をよまざりける

「花に鳴く鶯、水に住む蛙の声を聞けば、生きとし生けるもの、いづれか歌をよまざりける」
(=花間に鳴く鶯の声、水に住む蛙の声を聞けば、生きているもの、どれが歌をよまないでいられるでしょうか)

これは『古今和歌集』仮名序の一節で、紀貫之によって書かれたようです。
美しいもの・情緒豊かなものを見聞きすると、誰でもどの動物でも素晴らしいと感じずにいられないのだろう、喜びを表現せずにはいられないのだろうと、信じていたのでしょうね。

確かに、忙しく過ごしていても、鳥の鳴き声が聞こえれば、音のする方に目を向けて、花が咲いているなどすれば、心が安らぐものです。うらうらと暖かい日には、鼻歌でも歌いたくなります。

それは、動物も同じなのでしょうか。
都会にいても時折聞こえる鳥の鳴き声・虫の声は、縄張り宣言ですとか、求愛ですとか、仲間との意思疎通だけではないのかもしれませんね。
ただ楽しくて歌っているのかもしれないと思うと、同じ楽しい春の日を共有できているような気がして嬉しくなります。

3月5日(木) 春の雨の日

先日、大阪は感じの良い雨模様でした。数日うらうらとした日が続いた後のことで、ざあざあ降りではなくて、ぱらぱらと降りかかる雨です。春なので、梅雨と比べるとさほどむわつきもせず、肌寒くない程度にひんやりしていました。
雨雲が空を覆って、暗くなるべき時間帯でもないのに世界が薄闇に包まれて、高浜虚子 の「春雨のかくまで暗くなるものか」という句が思い出されました。

よく天気がどんよりすると気分も下がると聞きますけれど、雨の日もいい所が割合多い気がします。
水たまりに町並みが映って揺れる影が楽しいですし、きらきらと灯りを反射して美しい。断えず降りかかる雨の線も、傘をたたく雨粒の音もリズミカル。街灯の下の雨は特に鮮明に見えて、舞台でスポットライトが当てられているかのようにドラマチックです。
雨音を聞きながら、雨風凌げる部屋でのんびり過ごすのも心地よいひと時。ジョーン・エイキンの『しずくの首飾り』なんかを読むのも。

低気圧で頭痛になることもありますが、煩わしいことを考えなくて済む分、かえって好都合かもしれません。
思えば、随分長らく大雨の日に外出していない気がします。ずぶ濡れになることを覚悟の上で、思いきって出かけてみるのも悪くなさそうです。

2月26日(木) 春はお外で常温で

私の生活における楽しみの中で、かなりの割合を占めているのが食です。 それも、同じように食べるなら美味しいものを美味しく食べたい。

毎年楽しみにしているものは季節ごとにあり、夏なら少し冷やした桃を、冬ならあつあつの白菜鍋を飽きずに何回も食べます。
大事なのは、温度。「ひんやり」、「あつあつ」が適切に保たれていることが肝要です。

では、春はどうでしょう。
桜餅、三色団子、よもぎ餅、ぼた餅…。
お湯で淹れるお茶でいただいても美味しいですが、水出しのお茶ともよく合いそうです。
常温でも十分楽しめるのは、春の食べ物の大いなる魅力ですね。

この魅力は、外で食べる時にキラリと発揮されます。
「ひんやり」と「あつあつ」は持ち運んで保つのがなかなか難しいものですが、常温ならば話は早い。
保冷も保温もさほど気にしなくても良さそうです。

天気の良い日に、ピクニックに持っていくのにぴったりですね。
何をどこに持っていこうか、夢がふくらみます。
最近狙っているのは、仙太郎のひぃな薯蕷。お店で見かけたのですが、淡い色で男雛女雛が描かれていて、とっても可愛らしかったんです。
これを桃の節句に合わせて、野遊びしたいなぁと考え中です。日中はお仕事ですが、仕事終わりの夕方以降はちょうど皆既月食も見られますし、お外に出るのにうってつけです。

2月19日(木) 春のまどろみ

春といえば、お花見、ひな祭り、桜餅…。それから、春眠。
春眠暁を覚えずとは、孟浩然の有名な一句ですが、頭を縦にぶんぶん振りたくなるほど賛成です。 うらうらとした春の日のまどろみほど、甘美で幸せな時間も少ないものです。

それもどうせなら、至上の状況で春眠できると嬉しいもの。 そういうわけで、今回はどういう春眠が一番幸せだろうか、と考えてみました。

まず、何よりもぬくぬく暖かいこと。
寒さで目覚めるだなんてもっての外なので、お布団なり暖房なりで暖かくしておきます。

それから、気がかりなことはなるべくない状態にしておきたいもの。
何か引っ掛かることがあると、それだけでそわそわとしてしまって、あまり深くは寝付けません。やっておくべきことは、事前に済ませてしまうか、なかったことにします。

最後に、普段寝ない時間に寝ることです。眠るべき時間に寝ているのは当たり前であり、普段眠らない時間に寝るからこそ、そのありがたみが増すような気がしませんか。
何も予定を入れず、さあいくらでも寝るぞ、と意気込む時ほど幸せな時間も滅多にないように思います。割合簡単に幸せになれる性格で喜ばしいばかりです。

2月12日(木) 移ろう季節はグラデーション

春らしくなってきているとはいえ、寒さはさほど和らがず、先週私が夢見た春爛漫はまだかまだか、とじれったい日々が続いています。
春になったはずなのに、なんだこの凍えるような天気は、と文句がこぼれそうです。
冬ともいえず、春ともいえない、早春というのもなんだかぼんやりしているなぁと感じていたのですが、『徒然草』の一節を読んで、それなら仕方ないか、と納得しました。
ご紹介いたします。

”春暮れてのち夏になり、夏はてて秋の来るにはあらず。春はやがて夏の気をもよほし、夏よりすでに秋は通ひ、秋はすなはち寒くなり、十月は小春の天気、草も青くなり、梅もつぼみぬ”

「春が暮れた後で夏になって、夏が終わって秋が来るわけではない。春はやがて夏めいてきて、夏からすでに秋は始まっていて、秋はすぐに寒くなって、旧暦十月は小春日和、若葉も芽生え、梅も蕾をつけてふくらむ」というような意味です。

春夏秋冬という四季は、きっちり分けられるわけではないのですね。
それも当然といえば当然です。
気温だって段々と変わるものですし、日照時間も、自然界も、ある日を境に突如として様変わりするわけではありません。
急に季節が変わるのではなく、冬の中に春らしさが芽生え、春らしくなると夏らしさが顔をのぞかせる、という具合なのでしょうね。

そう思えば、いかにも「春爛漫」という時期の楽しみはそれはそれで大切にしたいものですが、途中の移ろう季節のグラデーションも楽しみたくなってきました。
そっと去り行く冬の裳裾と、段々と大きさを増す春の足音を楽しんで、この時期を目一杯味わおうと思います。

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暦生活編集部

日本の季節を楽しむ暮らし「暦生活」。暮らしのなかにある、季節の行事や旬のものを学びながら、毎日お届けしています。日常の季節感を切り取る #暦生活写真部 での投稿も募集中。暦生活の輪を少しずつ広げていきたいと思います。

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