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編集部のつれづれ便り|春

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一週間に一度、お便りをお届けいたします

暦生活編集部がつれづれと綴るお便りを、一週間に一度お届けいたします。
まったりひと休みする気持ちで、のんびり読んでいただけますと嬉しいです。

4月30日(木) キラキラDay

雨上がりの朝を歩いていると、以前教えていただいた「キラキラDay」なる日のことを思い出しました。

「キラキラDay」とは、なぜか世界がキラキラして見える日のことらしく、突き詰めれば気象現象かもしれないけれども、とりあえずそういう「いい一日」になりそうな日があるとのことでした。以前にも一度、今日がその日だという日に一緒にキラキラを眺めに行ったのですが、確かに葉っぱがキラキラして見えました。

先日も、まさにそんな「キラキラDay」でした。葉っぱも地面もキラキラッと光り、空気も澄んでいたような気がします。雨が空中の塵埃を洗い、葉に残る雨粒が光を反射しているのだと思うのですが、さていかがでしょうか。原理は何であるにせよ、気分が良いことには変わりありません。これからしばらく、「キラキラDay」が散見される季節になるのでしょうね。喜ばしい限りです。

良い香り あと三杯くらい飲めそう ずっしり茶玉と老玉

4月24日(金) 夏の気配

桜がいよいよ散り、春ももう終わりかなどと嘆かずにはいられません。
確かに霞のように咲いていた桜の木を見上げても、もはや花の形跡はなく、葉が青々と茂っています。
周りの木々を見渡してみても、濃淡の差はあれど、緑が深まりゆくばかり。
春のさらさらと降る雨ではなくて、じっとりとした初夏めいた雨の日も増えました。
いよいよ夏も近いのですね。

さて、先週は春らしいことを振り返ったので、今週はこの夏にしたい夏らしいことを考えてみました。

緑に囲まれて、滝や川の水流で涼む。
クーラーを消して、暑さを感じながら団扇でわずかばかりの涼を取る。暑いので五分間だけ。
蝉の鳴き声に包まれるところに、遠足に行く。
下鴨納涼古本まつりに行く。
葛饅頭か錦玉羹か、なんでも良いけれど透明な和菓子を食べる。
手持ち花火を何本でも気が済むまで楽しむ。
夏らしい、まっさらな白い綿の服を着る。
何かしら暑苦しいことをして、びしょびしょに汗をかいて、シャワーを浴びてさっぱりする。
髪の毛を切って、涼しげになる。1センチだけでも。

悪くない夏になりそうです。楽しみで胸がいっぱいです。

藤棚 翠緑世界 接続の芳しくない花冠

4月16日(木) 春らしいこと

春も暮れかかっているので、やり残した春らしいことがないか、一度見直してみることにしました。
ではまず、できたことから。

梅見をして、香りを楽しんだ。
おひな菓子を食べた。
苺のパフェを食べた。
苺大福を食べた。
苺のショートケーキを食べた。
ピクニックをした。
たんぽぽを見つけた。
桜餅を食べた。
他にも桜風味のお菓子を食べた。
翡翠色の緑茶を飲んだ。
朧月を眺めた。
春眠を貪った。
15本はお団子を食べた。
朝・昼・晩とお花見をした。
春風に吹かれた。
ぼたもちを食べた。
チューリップを見かけた
新しいことを始めようと、クレパスでにんじんを描いた。
花粉症に苦しんだ。
紫木蓮を見た。
躑躅が咲き始めているのを見た。

こう見ると、なかなか充実した春ですね。
さて次は、心残りなこと。まだ間に合うかもしれませんからね。
仙太郎の「桜と蓬のもちひ」を食べ逃した。どうしようかと悩んでいるうちに販売期間が過ぎました。
たんぽぽの綿毛を吹き損ねた。しっかりくっついていて、手強かったのです。

ふむ。意外にもさほど悔いなく過ごせたようです。
「桜と蓬のもちひ」は仕方ありませんね。来年再挑戦するほかありません。こう、二つしかない悔いの一つとなることがわかっていたら、躊躇わなかったのにと思うのも、後の祭りです。
たんぽぽの綿毛は、再挑戦することとします。まだまだ間に合いそうです。

4月9日(木) 夜の桜葉と昼の星

昨晩、夜桜を見に大坂城公園にお散歩に行きました。
もう大分葉桜になってきたはずですが、葉が暗闇に紛れて、満開のように見えました。
街の灯りも明るいはずなのに、存外星も見えました。

やわらかな風が頬を拂ってくれて、良い気分でしばらく過ごしていると、ふと以前「お星さまは、お昼はどこに行くの」と尋ねる小さな子のお話を聞いたことを思い出しました。

桜の葉も、昼の星も、見えないだけで、確かにそこに存在する。
認識していないだけで、私が思うより、世界は遥かに豊かなのでしょうね。

4月2日(木) 桜を見る人

昨日は、ぽつぽつと雨が降っていました。
雨の音を聞きながらお話をしていると、「雨が降っているから桜散りそうですね」との一言が。

桜の時期は、花を見る人もまた美しい季節だったなぁと思い出しました。
見上げて足を止める人、綺麗だねと言い合う人、一人で無言で写真におさめる人、どの人も桜の美しさに見惚れているのだと思うと、心が和みます。

ただ桜に見入っているというだけでも素敵なのに、目の前になくとも憐惜する人の心は、尚美しく感じます。
和歌の数々、孟浩然の「春暁」、李清照の「如夢令」を思い出して、ほのぼのとしたひと時でした。

3月26日(木) 平凡を愛する

春はうららかなので、考えることも気が抜けたようにぼんやりします。
昨日今日は、平凡なものをそのまま丸ごと愛せたら良いなぁと考えていました。

世の中には、特別なもの、貴重なもの、稀有なもの、高価なもの、優れたものは多くありますが、全てが、あるいは多くがそうでなくても構わない。
普通のもの、よくあるもの、平凡なものだって、心地よい。

目を瞠るような虹はもちろん何度だって見たいのですが、毎日見るほんのり曇っているような晴れているような、雲がいくつか浮かんでいる空だって素敵です。

デカルトの『精神指導の規則』には、「より困難なものを、より美しきものと見ること、これが人類の通弊である」と書いてありました。
他のことでもそうなのでしょうね。
手に入れることが困難なものは、心なしか他より美しく見えますものね。

でも、困難でないからといって、希少でないからといって、美しくないわけではありません。それらだって美しいのです。
それらを取り溢さず拾い集められる人間でありたいと思っている今日この頃です。

注ぎすぎてミルクティーにできなかった紅茶 霞んでいる海と空 いつものお散歩道

3月19日(木) 朧空

先日、佐賀に旅行に行ってきました。
波佐見焼に有田焼、吉野ヶ里遺跡と大満喫してきました。色々と楽しかったことは多かったのですが、連日愉快だったのは空のかすみ具合でした。

断えずうっすらと空が朧げで、さぞ多くの花粉が飛んでいよう、と思われる空でした。
冬と比べると湿度が高くなり、上昇気流も生じることによって、塵埃が吹き上げられているのでしょうね。
それも春らしいといえば春らしいもの。
張り詰めたように清々しい冬の空、人の体温が空中に溶け出しているかのような生温かい夏の空気を思うと、春はもっと雑多なのだなぁとしみじみしていました。

人に限らず、春は万物が生まれて熱を帯びているようで、それが暖かさを帯びて、空気中に漂っているような気がします。
実際には、気温が上がって暖かいというだけの話なのでしょうけれど。

それでも星空は綺麗に見えて、これは冬に来たらどれほどさやけく見えるのだろうか、と気になりました。
楽しい旅でした。

吉野ヶ里遺跡 お豆腐やさんの豆乳抹茶ラテ 星空

3月12日(木) いづれか歌をよまざりける

「花に鳴く鶯、水に住む蛙の声を聞けば、生きとし生けるもの、いづれか歌をよまざりける」
(=花間に鳴く鶯の声、水に住む蛙の声を聞けば、生きているもの、どれが歌をよまないでいられるでしょうか)

これは『古今和歌集』仮名序の一節で、紀貫之によって書かれたようです。
美しいもの・情緒豊かなものを見聞きすると、誰でもどの動物でも素晴らしいと感じずにいられないのだろう、喜びを表現せずにはいられないのだろうと、信じていたのでしょうね。

確かに、忙しく過ごしていても、鳥の鳴き声が聞こえれば、音のする方に目を向けて、花が咲いているなどすれば、心が安らぐものです。うらうらと暖かい日には、鼻歌でも歌いたくなります。

それは、動物も同じなのでしょうか。
都会にいても時折聞こえる鳥の鳴き声・虫の声は、縄張り宣言ですとか、求愛ですとか、仲間との意思疎通だけではないのかもしれませんね。
ただ楽しくて歌っているのかもしれないと思うと、同じ楽しい春の日を共有できているような気がして嬉しくなります。

3月5日(木) 春の雨の日

先日、大阪は感じの良い雨模様でした。数日うらうらとした日が続いた後のことで、ざあざあ降りではなくて、ぱらぱらと降りかかる雨です。春なので、梅雨と比べるとさほどむわつきもせず、肌寒くない程度にひんやりしていました。
雨雲が空を覆って、暗くなるべき時間帯でもないのに世界が薄闇に包まれて、高浜虚子 の「春雨のかくまで暗くなるものか」という句が思い出されました。

よく天気がどんよりすると気分も下がると聞きますけれど、雨の日もいい所が割合多い気がします。
水たまりに町並みが映って揺れる影が楽しいですし、きらきらと灯りを反射して美しい。断えず降りかかる雨の線も、傘をたたく雨粒の音もリズミカル。街灯の下の雨は特に鮮明に見えて、舞台でスポットライトが当てられているかのようにドラマチックです。
雨音を聞きながら、雨風凌げる部屋でのんびり過ごすのも心地よいひと時。ジョーン・エイキンの『しずくの首飾り』なんかを読むのも。

低気圧で頭痛になることもありますが、煩わしいことを考えなくて済む分、かえって好都合かもしれません。
思えば、随分長らく大雨の日に外出していない気がします。ずぶ濡れになることを覚悟の上で、思いきって出かけてみるのも悪くなさそうです。

2月26日(木) 春はお外で常温で

私の生活における楽しみの中で、かなりの割合を占めているのが食です。 それも、同じように食べるなら美味しいものを美味しく食べたい。

毎年楽しみにしているものは季節ごとにあり、夏なら少し冷やした桃を、冬ならあつあつの白菜鍋を飽きずに何回も食べます。
大事なのは、温度。「ひんやり」、「あつあつ」が適切に保たれていることが肝要です。

では、春はどうでしょう。
桜餅、三色団子、よもぎ餅、ぼた餅…。
常温でも十分楽しめるのは、春の食べ物の大いなる魅力ですね。

この魅力は、外で食べる時にキラリと発揮されます。
「ひんやり」と「あつあつ」は持ち運んで保つのがなかなか難しいものですが、常温ならば話は早い。
保冷も保温もさほど気にしなくても良さそうです。

天気の良い日に、ピクニックに持っていくのにぴったりですね。
何をどこに持っていこうか、夢がふくらみます。
最近狙っているのは、仙太郎のひぃな薯蕷。お店で見かけたのですが、淡い色で男雛女雛が描かれていて、とっても可愛らしかったんです。
これを桃の節句に合わせて、野遊びしたいなぁと考え中です。日中はお仕事ですが、仕事終わりの夕方以降はちょうど皆既月食も見られますし、お外に出るのにうってつけです。

2月19日(木) 春のまどろみ

春といえば、お花見、ひな祭り、桜餅…。それから、春眠。
春眠暁を覚えずとは、孟浩然の有名な一句ですが、頭を縦にぶんぶん振りたくなるほど賛成です。 うらうらとした春の日のまどろみほど、甘美で幸せな時間も少ないものです。

それもどうせなら、至上の状況で春眠できると嬉しいもの。 そういうわけで、今回はどういう春眠が一番幸せだろうか、と考えてみました。

まず、何よりもぬくぬく暖かいこと。
寒さで目覚めるだなんてもっての外なので、お布団なり暖房なりで暖かくしておきます。

それから、気がかりなことはなるべくない状態にしておきたいもの。
何か引っ掛かることがあると、それだけでそわそわとしてしまって、あまり深くは寝付けません。やっておくべきことは、事前に済ませてしまうか、なかったことにします。

最後に、普段寝ない時間に寝ることです。眠るべき時間に寝ているのは当たり前であり、普段眠らない時間に寝るからこそ、そのありがたみが増すような気がしませんか。
何も予定を入れず、さあいくらでも寝るぞ、と意気込む時ほど幸せな時間も滅多にないように思います。割合簡単に幸せになれる性格で喜ばしいばかりです。

2月12日(木) 移ろう季節はグラデーション

春らしくなってきているとはいえ、寒さはさほど和らがず、先週私が夢見た春爛漫はまだかまだか、とじれったい日々が続いています。
春になったはずなのに、なんだこの凍えるような天気は、と文句がこぼれそうです。
冬ともいえず、春ともいえない、早春というのもなんだかぼんやりしているなぁと感じていたのですが、『徒然草』の一節を読んで、それなら仕方ないか、と納得しました。
ご紹介いたします。

”春暮れてのち夏になり、夏はてて秋の来るにはあらず。春はやがて夏の気をもよほし、夏よりすでに秋は通ひ、秋はすなはち寒くなり、十月は小春の天気、草も青くなり、梅もつぼみぬ”

「春が暮れた後で夏になって、夏が終わって秋が来るわけではない。春はやがて夏めいてきて、夏からすでに秋は始まっていて、秋はすぐに寒くなって、旧暦十月は小春日和、若葉も芽生え、梅も蕾をつけてふくらむ」というような意味です。

春夏秋冬という四季は、きっちり分けられるわけではないのですね。
それも当然といえば当然です。
気温だって段々と変わるものですし、日照時間も、自然界も、ある日を境に突如として様変わりするわけではありません。
急に季節が変わるのではなく、冬の中に春らしさが芽生え、春らしくなると夏らしさが顔をのぞかせる、という具合なのでしょうね。

そう思えば、いかにも「春爛漫」という時期の楽しみはそれはそれで大切にしたいものですが、途中の移ろう季節のグラデーションも楽しみたくなってきました。
そっと去り行く冬の裳裾と、段々と大きさを増す春の足音を楽しんで、この時期を目一杯味わおうと思います。


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暦生活編集部

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