季節の和菓子帖とは?
年中行事と、結びつきのある和菓子を毎月ご紹介します。
あの頃食べたなと懐かしく思う気持ち、どんな味がするんだろうとワクワクする気持ち。
暮らしの中の行事を楽しみながら、その季節でしか食べられない和菓子を味わってみませんか?
年中行事「お花見」
日本全国あちらこちらで桜の開花が聞こえ、
今年の桜の花を楽しみにされている方も多いのではないでしょうか。
桜は日本の国花で、日本人は平安時代からお花見を楽しんでいました。
七十二候の春分の次候には「桜始開(さくらはじめてひらく)」とあるように、桜が咲くことの喜びを暦の上でも残しています。
お花見というとピクニックや宴会のイメージがあるかもしれませんが、古くは「田の神様に豊作を祈る」行事だったとか。
桜の「さ」は田の神様、「くら」は神様の座るところという意味があり、桜の木は田の神様が山から里におりてくる時にいらっしゃる場所とされていました。田の神様を迎え、桜の下でお料理やお酒でおもてなしし、豊作を願ったそうです。

和菓子「花見だんご・串だんご」
桜が開花し、春もいよいよ本番。
一年の中でとくに季節の移ろいを感じる時期かもしれませんね。
桜の時期には、和菓子屋さんを訪れる人が、普段よりも多くなるようです。お花見のお供に選ばれる和菓子の代表選手は、桜餅や草餅、そして串だんご。
串だんごの中でも、「花見だんご」は、赤(桃色)、白、緑の3色の上新粉のお餅が一般的です。この3色には、四季(3色で春夏冬で秋がない、飽きない)や、桜の移ろい(つぼみ、花、葉)を意味しているなど、様々な説があるそうです。何気なく食べている和菓子にも、いろいろな想いがこめられていて、知れば知るほど、奥深いなぁ・・・と感じます。
「花より団子」という言葉がありますが、桜と和菓子なら、どちらも楽しみたいのが本音ですよね。
今年は、ご近所の桜を楽しまれるかたも多いと思います。そこで、今回はお散歩をしながらでも食べやすい串だんごを、「花見だんご」に限らず、いくつかご紹介します。それぞれの場所で、桜の移ろいと和菓子を楽しめますように。


【 神奈川 】御菓子司 大倉山青柳

【 花より花見だんご 】
大倉山青柳さんの「花より花見だんご」は、毎年2月上旬から販売されます。一般的な「花見だんご」よりも販売時期が早いのは、お店の近くに、梅の名所「大倉山梅林公園」があるからです。この梅林公園では2月から梅が咲き、さらには桜を愛でることもできるのです。
「花より花見だんご」は、羽二重粉でつくられており、上新粉でつくられたお餅よりもやわらかく、もちもち、ぷるぷるとしています。
梅紫蘇、柚子、よもぎが練りこまれただんごは、赤、橙、緑。それぞれに「梅肉入りの梅餡」、「柚子の果肉」、「こし餡」が入っています。
中にあんこが入った「花見だんご」は意外と珍しく、ひとつずつに爽やかな香りと味わいを感じられます。美味しくて、楽しい大倉山青柳さんの「花より花見だんご」。私のお気に入りです。
(平年は、時期をずらして、もう1種類の「花見だんご」も販売されます。来年以降もお楽しみに)
【「花より花見だんご」の販売期間】
2月上旬より4月上旬
店舗、全国配送可能
(WEBサイトの「お問い合わせ」やお電話でご連絡ください)
【 店舗情報 】
神奈川県横浜市港北区大倉山1-2-8
【 お店の紹介 】
創業70年。戦前に川崎で製餡業を営んでいましたが、戦後に「あの時の餡をもう一度作りたい」と、昭和26年(1951年)に大倉山駅前で和菓子店を開業しました。良い素材を用いて、もっと美味しい御菓子を届けたいと、日々、研究や工夫を重ねています。
代表銘菓は「大倉山の梅最中」。定番のおだんごやお饅頭から上生菓子まで、季節の移ろいにあわせた御菓子を幅広く揃え、地元のかたに愛されているお店です。毎年春に販売される「特選 あまおういちご大福」も大人気。ぜひ、一度味わってみてください。
【 京都 】豆政

【 すはまだんご 】
豆政さんの「すはまだんご」は、大豆の粉(きな粉)を用いてつくった「すはま」を、小さな串だんごの形にした御菓子です。持ち運びをしやすいので、おやつはもちろん、仕事の合間の一服や、お散歩中など、いつでも、どこでも、気軽に味わうことができます。
豆の風味と甘味を感じる「すはまだんご」は、煎茶や抹茶、紅茶にも合いますが、私にとっての一番はコーヒー。できればブラックコーヒーと合わせるのがおすすめです。
豆繋がりからなのか、お互いのコクや香ばしさを引き立て合っているように感じます。お気に入りのお店のコーヒーをテイクアウトし、近所の桜を眺めながら、「すはまだんご」を味わうひと時はいかがですか。
【「すはまだんご」の販売期間】
通年
各店舗、オンラインショップなど
【 店舗情報 】
京都府京都市中京区夷川通柳馬場西入る6-264(本店)
【 お店の紹介 】
明治17年(1884年)創業の老舗豆菓子、和菓子店。
代表銘菓は、「夷川(えびすがわ)五色豆」。もともと白しか存在しなかったえんどう豆に、青・赤・黄・黒の四色をくわえてつくった御菓子で、明治20年からつくられています。澄んだ湧き水を仕込みに使用し、厳選された素材で御菓子を作り続けています。
【 愛媛 】白鷺堂

【 坊ちゃん団子 】
全国各地のご当地ならではのお団子。思い出すと食べたくなるお団子がたくさんありますが、今回は、その中から、あえて有名なおだんごをご紹介します。夏目漱石の「坊ちゃん」にも登場する「だんご」、「坊ちゃん団子」です。食べたことはないけれど、知っているというかたが多いかもしれません。
「坊ちゃん団子」は松山の和菓子屋さんだけでなく、お土産屋さんでも販売されていますが、ぜひ、愛媛松山・道後にある、白鷺堂さんの「坊ちゃん団子」も食べてみてください。大量生産ではない、手作りの味わいで、ふんわりした甘さのあんこ(抹茶あん、黄味あん、こしあん)がたっぷりです。
私のおすすめは、お土産とは別に、店頭で一服すること。
御菓子をひとつから買うことができ、淹れたての煎茶と一緒に味わえます。松山には、松山城や道後公園などの桜の名所もあります。遠方のかたは、お取り寄せをしてもいいですね。安心しておでかけをできる時期になったら、ぜひ、松山のお店にも行ってみてください。
【「坊ちゃんだんご」の販売期間】
通年
店舗にて販売。
お取り寄せは、お電話でご注文ください 089-921-9031
【 店舗情報 】
愛媛県松山市道後湯之町12-27
【 お店の紹介 】
大正3年(1914年)創業。道後温泉のおひざ元、道後ハイカラ通り沿いにお店を構えています。看板商品は、柚子タルト、珈琲タルト、坊ちゃんだんごなど。道後温泉の白鷺伝説にちなんだ白鷺落雁や白鷺羊羹はぜひ、ご予約を。


梅田なお実
和菓子ライフナビゲーター・デザイナー
東京都出身。好きな季節は初夏。「毎日が和菓子日和」主宰。
全国の和菓子屋さんを訪ね、繋がりをつくりながら、味わった和菓子のイラストや記事を描き、和菓子の魅力を広める為のイベント等、様々な活動を行っています。
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