磯遊び

季語 2023.04.16

この記事を
シェアする
  • twitter
  • facebook
  • B!
  • LINE

おはようございます、こんにちは。編集者の藤田華子です。

春の季語に「磯遊び」というものがあります。
文字のとおり磯で遊ぶことを意味し、水辺の生き物を観察したり、捕まえたり、大自然と触れ合うレジャーです。

「海遊びなら、夏がベストタイミングじゃないの?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、磯遊びが春の季語になったわけを調べると、意外にも雛祭りと関係がありました。

唐の時代、日本には〝五節句〟が伝来しました。五穀豊穣や、無病息災、子孫繁栄などを願い、穢れを祓う習わしです。そのうちのひとつ〝上巳の節句(じょうしのせっく)〟 は、3月上旬に女性や子どもたちがピクニックのようにお弁当を持ち、川や海に出かけ、一日を楽しく過ごすものでした。

しかしこの外出は、ただのお遊びではありません。田植えに入る前に田んぼの神様を迎えるため、身の穢れを洗い流すのが目的です。
具体的には、紙で作った人形で体を撫で、穢れを移らせたあと、川や海にその人形を流すんです。
ちなみに、この人形が「雛人形」の原型になったのではないかと考えられています。詳しくは、雛祭りの記事もご覧くださいね。

なるほど、春に磯に出かけるのは理由があったわけで、これが磯遊びが春の季語となった理由でした。うららかな春の陽気に誘われ、長閑な景色に心打たれて平和を祈る…なんだか、その気持ちは今も昔も自然と湧いて出るもののように思えます。

子どもの頃、時間を忘れるほど磯遊びに没頭し、カニやヤドカリ、イソギンチャク、小さな魚などを観察した記憶があります。
海面が低くなる「干潮」に合わせて行くと、満潮のときに逃げ遅れた生物にお目にかかることができました。潮位がわかる「潮見表」をチェックして行くと、楽しさが何倍にもなるはずです。もちろん、触れてはいけない生き物や植物に十分注意してくださいね。

こんなふうに自然に思いを馳せると、今回の朝の連続テレビ小説のモデルになっている、植物博士・牧野富太郎の歌が浮かびます。

「朝夕に草木を吾の友とせば こころ淋しき折節もなし」

自然の中に身を置くと、たくさんの出会いがあって孤独や寂しさを忘れてしまうーーそんな一首です。
春を、大自然のなかでのレジャーを、思い切りお楽しみください。

この記事をシェアする
  • twitter
  • facebook
  • B!
  • LINE

藤田華子

ライター・編集者
那須出身、東京在住。一年を通して「◯◯日和」を満喫することに幸せを感じますが、とくに服が軽い夏は気分がいいです。ふだんは本と将棋、銭湯と生き物を愛する編集者。ベリーダンサーのときは別の名です。

関連する記事

カテゴリ