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朧月おぼろづき

季語 2021.03.19

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こんにちは。気象予報士の今井明子です。
菜の花の甘い香りでウキウキとした気分になる今日この頃。

菜の花が咲いているのを見ると、つい「菜の花畑に 入日薄れ……」と口ずさみたくなります。この歌の題名はそう、「おぼろ月夜」です。
というわけで、今回は「朧月」についてお話しします。

朧月とは、霞や雲などでかすんで見える月のことを指します。

雲の中でも高層雲という対流圏の中層に薄く広がる雲は、一般的に「おぼろ雲」と呼ばれています。この雲越しに月を見ると、なんともぼんやりとした幻想的な見え方になります。

ちょうど、春先は中国から移動性高気圧がやってきて、日本列島を通過します。移動性高気圧の後には温帯低気圧もついてきます。

温帯低気圧は温暖前線と寒冷前線を伴いますが、温暖前線が近づくと雲ひとつなかった青空に徐々に雲が増えていき、その雲が次第に分厚くなって、やがてしとしと雨が降り始めます。

この、温暖前線が近づいているサインとしておぼろ雲が登場するので、おぼろ雲が登場すると天気は下り坂だといわれています。

移動性高気圧が通過するのは春と秋ですので、おぼろ雲越しの月も春や秋によく見られます。しかし、「朧月」という言葉は春の季語です。秋の場合は「朧月」とはいわないのです。(では、秋の場合はなんというのでしょうね……?)

ちなみにこの季節、たまに月のまわりに禍々しい感じのする虹色の輪が見えることがあります。これは「花粉光環」といい、この季節に飛ぶスギなどの花粉が空中に漂っている証拠です。

月だけではなく、太陽や街灯のまわりにも見えますので、見えたら「あー、花粉がすごく飛んでるんだな!」と実感することでしょう。あまりうれしくはありませんが、これもある意味春ならではの風景ですね。

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今井明子

サイエンスライター・気象予報士
兵庫県出身、神奈川県在住。好きな季節はアウトドア・行楽シーズンまっさかりの初夏。大学時代はフィギュアスケート部に所属。鯉のいる池やレトロ建築をめぐって旅行・散歩するのが好き。

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