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夏の果なつのはて

季語 2023.08.26

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お盆が過ぎると、少しずつ暑さも和らぎ秋の気配が漂います。

あれだけ鳴いていたセミの声はだんだん小さくなり、マツムシやコオロギの声が聴こえてくるようになります。朝晩には涼しさを感じることが多くなり、空を見上げると入道雲のそばで秋の雲がちらつくようになる。「あぁ夏が終わってしまう」という物悲しい気持ちを残しながら、季節は確かに移り変わっていく..。

こんな時期に俳句でよく使われる季語が、「夏の果(なつのはて)」です。
夏の終わりを象徴する言葉で、過ぎゆく季節を惜しむ意味を込めてこれまで多くの歌が詠まれてきました。

白波のあちらこちらや夏の果  桂 信子
うなぎ屋の黒き天井夏の果  桂 信子
夏の果て西瓜大きく切られけり  鈴木真砂女

白波にうなぎにスイカ..。
暑い暑いと嘆いた夏も、振り返れば思い出深いシーンばかりだなぁということが伝わってきますね。

一説によるとそもそも俳句の世界では、「夏」はあまり重要視されてこなかったといいます。とくに昔は、エアコンなど家電製品はなく、夏は暑さに耐えしのぐばかりで、俳句を詠もうなど詩的な雰囲気にはならずにもっぱら「秋近し」の季語が多く使われてきました。しかし、冷房が完備された現代は快適に過ごせるようになり、逆に夏をたのしみながらも惜しむ余裕が生まれたことから「夏の果」という季語が盛んに使われるようになったのだとか。

なるほど、私は暑すぎるとなにもやる気が起こらなくなるのですが、俳句の世界でも同じなのですね。

さて、ここで一句。
自作の俳句をつくってみたので、紹介させてください。

夏の果 夜のとばりに ふりかえる

毎年夏の終わりの夜は、なぜだかさみしい気持ちが湧いてきます。
ときおり感じる冷たい空気を浴びながら、今年の夏の思い出をふりかえります。

久しぶりにお盆に帰省して家族に会ったこと、
スイカやとうもろこしを口いっぱいに頬張ったこと、
カブトムシや鈴虫を飼ってお世話したこと、
夏の終わりに線香花火をしたこと..

どの体験も、この季節ならではのイベントばかり。
そんなことを静かな夜にふりかえる時間は、尊くもあり寂しくもあり。はたまた秋を迎える準備でもあるのかなぁと思います。

みなさんは今年の夏、どんなことがありましたか?

たのしかったことも、今年は時間がなくてできなかったことも、
まるっと抱えながら物思いにふける時間をぜひ味わってみてください。

夏の果(なつのはて)。
それは夏の終わりであり、秋へと続く道のりでもあります。

よき夏の終わりを、過ごせますように。

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高根恭子

うつわ屋 店主・ライター
神奈川県出身、2019年に奈良市へ移住。
好きな季節は、春。梅や桜が咲いて外を散歩するのが楽しくなることと、誕生日が3月なので、毎年春を迎えることがうれしくて待ち遠しいです。奈良県生駒市高山町で「暮らしとうつわのお店 草々」をやっています。好きなものは、うつわ集め、あんこ(特に豆大福!)です。畑で野菜を育てています。

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