こんにちは。僧侶でライターの小島杏子です。
気温や雲のかたち、日の長さ、風の香りに旬の食べ物……。みなさん、そこかしこで秋を感じておられることと思います。お仕事や学校などでも秋の行事が催されているのではないでしょうか。
今回は秋の仏教行事「お十夜」についてのお話です。
お十夜とは、主に浄土宗のお寺で10月や11月に行われる法要。十夜念仏会、十夜会、十夜念仏、十夜講、十夜法事など呼び名はさまざまです。
お念仏「南無阿弥陀仏」を中心とした法要で、もともとは陰暦の10月5日夜半(10月6日)から10月15日までの十日十夜にわたって行われていました。現在では新暦で行うお寺や、一日〜数日に縮小して厳修されることが多いようです。
お十夜のはじまりは室町時代。6代将軍足利義教の執権をつとめた平貞経の弟、平貞国が京都の黒谷にある真如堂(しんにゅどう)にこもり、十日十夜の念仏行を行ったことに由来するといわれます。真如堂は正式名称を鈴聲山真正極楽寺という、天台宗のお寺です。
その後、1495年(明応4年)10月、当時の後土御門天皇によって、鎌倉にある浄土宗大本山光明寺でもお十夜の法要の厳修が許されることになりました。浄土宗におけるお十夜のはじまりであり、これ以後各地でお十夜が勤められるようになっていきます。
現在でも、平貞国がこもった真如堂のお十夜(十日十夜別時念仏会)や、光明寺のお十夜法要はとくに有名です。とても大きな法要ですので、お近くの方は、機会があればいつか参拝なさってみてください。僧侶たちが唱えるお念仏には、長く声を引くような節がついていて、お堂に響くその声のなか手を合わせる時間はとても貴重な体験になると思います。
(いくつかの寺院では2020年のお十夜を中止または非公開、人数制限等などの対応にて厳修しておられるようです。)
実は「お十夜(十夜)」は冬の季語でもあります。
こうして歌に詠まれてきたことや、通称の「十夜」に「お」をつけて「お十夜」と親しみを込めて呼ばれてきたこと。この仏教行事が、人々の秋の暮らしのなかで親しまれてきた長い時間を思わせます。
このお十夜の法要ですが、無量寿経(むりょうじゅきょう)というお経に由来します。お釈迦さまが説かれた教えをまとめたものがお経ですが、さまざまなお経のうち、浄土宗でもっとも大切にされているのが浄土三部経というお経です。無量寿経はそのなかのひとつ。南無阿弥陀仏というお念仏のお救いについて説かれています。
この無量寿経には、
〈 仏の世界には煩悩などがなく、修行をするのにとても良い環境である。しかし、私たちが生きるこの世の中は修行のさまたげとなる迷いや苦しみ、悪行があまりに多い。そのため、この世での十日十夜の行は、仏の世界での千年の修行にも勝る…… 〉
と説かれている部分があり、ここを典拠としてお十夜の法要が始まったとされています。
あわただしい日々のなか、自分の現在地や行く先についてじっくり思いを巡らせるのは、そう簡単なことではありません。季節ごとに営まれてきた仏教行事の多くは、そんな私たちに「なにが大切なことなのか、ちゃんと気づきなさいよ」と立ち止まらせてくれるもののように感じます。お十夜の法要もそのひとつだと捉えてもいいかもしれません。
みなさんのお近くの浄土宗のお寺でも、もしかしたらお十夜の法要が営まれているかもしれません。過ごしやすい秋の散歩がてら、訪れてみてはどうでしょうか。
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