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梅ふふむ

季語 2024.02.01

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こんにちは。巫女ライターの紺野うみです。

立春を間近に控えた、この季節。
道を歩いていてふと目線を上げたとき、枝先に小さく控えめに開いた梅の花や、ぷくっと膨らんだその蕾を見つけると、どんなに寒くても「春」の気配を感じて自然に顔がほころびます。

本日ご紹介するのは、そんな今にも開きそうな梅の花の蕾を表現した可愛らしい言葉、「梅ふふむ」です。
日常的に耳にすることは少ないかもしれませんが、俳句の世界では初春の季語にもなっているので、ひょっとするとご存知だった方もいらっしゃるでしょうか。

漢字で書くと「梅含む」と表記するのですが、あえてひらがなで書いたこの「ふふむ」が、日本語のやさしさや、たまらない味わい深さを感じさせている気がします。

日本語というのは、その「語感」だけでも十分に、その物の姿や意味を表現しているような言葉がたくさんあるものですが、この「梅ふふむ」もその一つなのではないでしょうか。
「うめ、ふふむ」――口に出すと、その愛らしさに心がきゅんとなって、不思議なことに口角が自然と上がってしまうのです。

あとほんの少しで開こうとしている蕾は、その内側に、ポンっとはじけるようなエネルギーを秘めているように思います。
小さな花が、いよいよ外の世界に顔を出す、柔らかくも元気に満ちた力です。
この言葉がイメージさせる梅の蕾の姿は、まるで自分が花開くタイミングをうかがいながら、その瞬間を今か今かと心待ちにしているようですよね。

思えば、まだまだ寒い時期から一生懸命に花を開かせてくれる梅は、私たちに春の訪れを予感させてくれる、生命力と希望の象徴のような存在と言えるかもしれません。
長い冬がやっと終わり、いよいよ花を咲かせんとする蕾を見ていると、私たちの心もやさしく励まされるような気がします。

つらいとき、苦しいとき、哀しいとき、さみしいとき。
それは人生における「冬」であって、私たちもその寒さと厳しさの中では、じっと耐え続けなければならないときがあるものです。

でもきっと、私たち人間も草花と一緒。
その間にはひっそりと休んだり、外の世界からコツコツ栄養をもらったりして、内側に力をいっぱい溜めておくのです。
冬に負けて、内側に秘められた希望を腐らせてしまわないように。

どんな植物でも、芽吹いてすぐに花が開くわけではありません。
蕾になってからだって、まだまだ硬く閉じられていたものが少しずつ緩み、やっと「ふふむ」のです。

梅ふふむ。我もふふむ。
私たちにとっての希望の春も、きっとすぐそこに。

春を呼ぶ梅の姿を眺めながら、心の中にはいつでも、希望のエネルギーを持ち続けていたいものですね。

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紺野うみ

巫女ライター・神職見習い
東京出身、東京在住。好きな季節は、春。生き物たちが元気に動き出す、希望の季節。好きなことは、ものを書くこと、神社めぐり、自然散策。専門分野は神社・神道・生き方・心・自己分析に関する執筆活動。平日はライター、休日は巫女として神社で奉職中。

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