だんだんと日が短くなり、秋の深まりを感じる季節となりました。
自然の風景も少しずつ様変わり。
緑がだんだんと薄くなり、まるで衣替えをしたかのようにある日を境にポッとほのかに色づく木々や植物があります。いつもは通り過ぎてしまうのに、この時期になると「きみも紅葉するんだねぇ」なんて話しかけながら、立ち止まって観察する機会が多くなります。ときには家に持ち帰って花器に生けてみたり、木の実をお皿にのせてみたり。
自然の移ろいを暮らしに取り込んでみたくなる、そんな季節だなぁと思います。
晩秋の季語である「櫨紅葉(はぜもみじ)」もまた、秋を感じる息吹の一つ。
枝に沿って均一に並ぶ、スッと縦長に伸びた葉っぱは存在感があるだけでなく、真っ赤に色づくとさらに迫力が出て、歌を詠みたくなる気持ちもわかるような気がします。
櫨の木は、ウルシ科の落葉高木。
沖縄や九州、四国、中国地方など温暖な場所に生育していて、初夏に枝先に黄緑色の小さな花を咲かせ、秋には紅葉とともに球形の実が熟します。
かつては櫨の実から蝋(ロウ)を精製して、和ろうそくの原料や医療品、ハンドクリームなどの化粧品、クレヨン、木工用のワックスなどに使っていたそうです。海外にも化粧品の原料として輸出されていましたが、今では櫨の実を収穫する人が少なくなり、櫨の木自体もどんどん切られて少なくなっているのだそう...。
技術と需要はあるのに、原料が採れなくなっているという問題は他の分野にも多くみられますが、知るたびにもどかしい気持ちになります。とくに私は和ろうそくの柔らかな灯りが大好きなので、無くなってほしくないなぁと心から思います。
今回原稿を書きながら、櫨の木を探しに近所を散歩してみました。
…が、似ている木はたくさんあれど、櫨の木らしきものは見つかりませんでした。
近所の人に聞いたら「この辺りでは見たことないねぇ」と言っていて、がっくり。ただ私が見つけられなかっただけかもしれませんが、いつか真っ赤に染まった櫨の木を見てみたいなぁとますます気持ちが高まりました。
櫨の木以外の落葉樹もそうですが、晩秋に一斉に色づく様子は何度見てもいいなぁと思います。冬に葉っぱが落ちたり色が抜けたりしていく前の、最後の輝き。やがて散ってしまう「はかなさ」があるからこそ、際立つうつくしさなのかなぁと思います。
人間も生き物も植物も、みんな同じなのかもしれませんね。
今年も晩秋に色づく様子を、思う存分たのしみたいなぁと思います。
〈参考文献〉
高根恭子
うつわ屋 店主・ライター
神奈川県出身、2019年に奈良市へ移住。
好きな季節は、春。梅や桜が咲いて外を散歩するのが楽しくなることと、誕生日が3月なので、毎年春を迎えることがうれしくて待ち遠しいです。奈良県生駒市高山町で「暮らしとうつわのお店 草々」をやっています。好きなものは、うつわ集め、あんこ(特に豆大福!)です。畑で野菜を育てています。
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