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宇津田姫うつたひめ

季語 2024.12.27

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こんにちは。巫女ライターの紺野うみです。

日本には、古くから「八百万(やおよろず=数え切れないほど)の神」がいると伝えられていますが、それぞれの神様には当然個性があり、「〇〇の神」や「〇〇の女神」といった肩書きを持っていることが少なくありません。
今回ご紹介する「宇津田姫」をご存知の方は、どのくらいいらっしゃるでしょうか?
というのも、この神様は「冬を司る女神」と言われているのですが、いわゆる日本の神話などに登場するような神道に関連する神様ではなく、俳句の世界に季語として登場する、四季を司る女神の中のひとりに数えられているのです。

四季の女神は、冬の「宇津田姫」以外に、春の「佐保姫(さほひめ)」、夏の「筒姫(つつひめ)」、秋の「竜田姫(たつたひめ)」がいます。
春と秋のお姫様は、文学作品の中にもよく登場して比較的有名なのですが、夏と冬のお姫様は、なかなか登場することがないのだとか。
春と秋の女神については、かつて平城京において五行思想に基づき、東(春)には佐保山があり西(秋)には竜田山があった由縁で、対の存在として信仰されるようになったという説があります。

夏と冬の女神については、登場する文献もかなり少なく、その由来については謎に包まれています。
宇津田姫に関して掘り下げると、初出は江戸時代に生まれた連歌のための辞書『匠材集(しょうざいしゅう)』の中に、「冬を守神なり」という記述があります。
明確な説明が存在しない分、俳句を詠む人々はそれぞれ冬に関するイメージを膨らませつつ、「宇津田姫」の登場する句を詠んできたのでしょう。

つまり、この女神様は冬の象徴とも言える存在であり、私たちが想像する「冬」の美しさや魅力そのものであるとも言えるのではないでしょうか。
冬と聞くと、氷に閉ざされた世界や寒さに耐える季節という印象が強いですが、女神様の姿をイメージしようと思うと、それはミステリアスな雰囲気や厳しさの中にある凛とした強さを思わせてくれる気がします。

「宇津田姫」の姿を思い浮かべながら過ごす冬は、どんなに寒くてもちょっとだけ身近な季節に感じられるかもしれません。
皆様も、ぜひこの機会に「冬の女神」の存在を覚えていただき、冬が来るたびに「今年も宇津田姫様の季節がやってきたなぁ」と思い出してみてください。
そしてそれぞれに、女神様が微笑んでくださるような、冬の魅力や楽しみを見つけてみてはいかがでしょうか。

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紺野うみ

巫女ライター・神職見習い
東京出身、東京在住。好きな季節は、春。生き物たちが元気に動き出す、希望の季節。好きなことは、ものを書くこと、神社めぐり、自然散策。専門分野は神社・神道・生き方・心・自己分析に関する執筆活動。平日はライター、休日は巫女として神社で奉職中。

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