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春隣はるとなり

季語 2025.02.06

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こんにちは。巫女ライターの紺野うみです。

気が付けば、朝目覚めたときや夕方に外を歩くとき、一日の中で明るさを感じる時間が長くなってきました。
日が長くなってくるのと共に、さまざまなところから感じるのは春の気配です。

今回ご紹介するのは、「春隣(はるとなり)」という冬の季語。
長かった冬もいつしか終わりに近づき、そこはかとなく春の気配が漂う……そんな様子を表現している、心がほっこりするような可愛らしい言葉です。

この「春隣」の言葉には、春を待ち焦がれる心が、そっと隠されているようにも思えませんか?
「もう、すぐそこまで来ているんだよね?」「だって、隣にいる感じがするもんね」と、姿は見えないものの、待ち焦がれた相手が現れるのを今か今かと楽しみにしている気持ちが、言葉の中に見え隠れしています。

冬から春の変わり目は「三寒四温(さんかんしおん)」とも言われますが、寒い日と暖かい日が交互に繰り返されながら、少しずつ春の姿が明確になっていきます。
季節というのは曖昧かつ不思議なもので、背中合わせ、隣り合わせでありつつも、お互いの領域まで溶け合って、進んだり戻ったり……。結局のところ、私たち一人ひとりが五感を使って「感じること」の他には、季節を知る術はないのです。

皆さんが、春が隣まで来ているかもと感じるのは、どんな瞬間でしょうか?
木の枝先に、芽や蕾が膨らみ始めているのを見つけたとき。
どこからか、ウグイスの鳴き声が聞こえたとき。
昼間の日の光に、積もっていた雪や氷が解け始めてきらめいていたとき。
吹く風が穏やかで、ひなたに出ると背中にあたたかさを感じたとき。
春に旬を迎える食べ物が、お店に並び始めたとき。

人間が望んで作り上げた世界は、快適さを求めて年中同じ温度の室内にできますし、食べ物だって、いつでも手に入るようになりつつあります。
それでも、外の世界はまだまだ「自然」のまま、あるがままに私たちと接してくれています。
それは時に厳しい姿であることもありますが、基本的には私たちの心を癒し、和ませ、ホッと安心感を与えてくれるのではないでしょうか。

季節の変わり目に、隣り合った二つの季節のグラデーションを楽しむのも、心を豊かにしてくれる素敵な瞬間です。
皆さんも、この冬から春にかけて、ぜひ「春隣」を探してみてくださいね。

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紺野うみ

巫女ライター・神職見習い
東京出身、東京在住。好きな季節は、春。生き物たちが元気に動き出す、希望の季節。好きなことは、ものを書くこと、神社めぐり、自然散策。専門分野は神社・神道・生き方・心・自己分析に関する執筆活動。平日はライター、休日は巫女として神社で奉職中。

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