こんにちは。気象予報士の今井明子です。
初夏のカラッとした暑さから、次第に蒸し暑い空気に変わりつつあります。
この季節の季語として「南風(みなみかぜ、なんぷう、はえ、みなみ、まじ、まぜ、くだり)」というものがあります。読み方は「みなみかぜ」だけでなく、「みなみ」や「なんぷう」など、俳句の5・7・5のリズムを整えるためにさまざまです。
南風は地方によって独自の読み方もあります。中国・四国・九州・沖縄地方では「はえ」、関東以西の太平洋側や瀬戸内地方では「まじ」「まぜ」、そして日本海側では「くだり」と呼ばれることが多いです。また、「みなみ」という読み方は、もとは船乗りの言葉に由来し、関東以北の太平洋側で使われています。

では、なぜ南風が夏の季語になるのでしょうか。実はこの南風は、夏の季節風です。季節風といえば、冬にシベリア高気圧から吹き、日本海側に大雪をもたらす北西の季節風をイメージする人が多いはず。これに対して、初夏から夏にかけては、それと反対の風向の南東の季節風が吹きます。これが夏の季節風です。
季節風とは、沿岸で吹く海風と陸風の大規模バージョンです。
海は熱しにくく冷めにくい性質を持ち、陸は熱しやすく冷めやすい性質を持ちます。ですから、昼間は陸のほうが海よりあたたまりやすくなり、海から陸へと風が吹きます。逆に、夜は陸はすぐに冷えて海のほうが相対的にあたたかくなるため、陸から海へと風が吹きます。

これをもっと大きなスケールでとらえると、大陸と海でもあたたまりやすさ、冷めやすさが違ってきます。大陸では冬はキンキンに冷えるのに対し、海のほうがまだあたたかいので大陸から海に向かって風が吹きます。これが冬の季節風です。そして、季節が夏に向かうにつれて、大陸は海よりも早くあたたまるため、海から大陸へと風が吹くのです。これが夏の季節風です。
冬の季節風は日本海側に大雪をもたらしますが、夏の季節風はいったい何をもたらすのでしょうか。それは梅雨です。

俳句では、南風のなかでも梅雨のうつうつとした時季に吹くものを「黒南風(くろはえ)」と、梅雨明け後の盛夏に吹くものを「白南風(しろはえ)」といって区別することがあります。今年の梅雨は長くなりそうか、それとも短いのか。本格的な夏を前に期待が高まります。

今井明子
サイエンスライター・気象予報士
兵庫県出身、神奈川県在住。好きな季節はアウトドア・行楽シーズンまっさかりの初夏。大学時代はフィギュアスケート部に所属。鯉のいる池やレトロ建築をめぐって旅行・散歩するのが好き。
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