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田植えたうえ

暦とならわし 2020.05.17

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こんにちは。巫女ライターの紺野うみです。

皆さんは、お米が好きですか?
私を含めて、きっと「大好きです!」と即答する方のほうが多いのではないでしょうか。

日本人にとっての主食である「お米」は、今では一年中当たり前のように手に入り、口にすることができている食べ物のひとつですよね。
ふわりと湯気立つ炊き立てのご飯の美味しさ、それを口にしているときの幸福感は、多くの日本人にとって本当に特別なものだと思います。

そもそも、弥生時代に始まったと伝えられている「稲作」ですが、私たちの国が成り立つうえで、とても大きな役割を担ってきました。
人々が互いに協力し合う必要のある稲作文化が広まり、それが生活の中心になったことで、日本の中には「村」という集団生活の概念が生まれます。

神道の神話で伝えられていることの中にも、日本人の命の源とも言える「稲穂」は、この日本の祖神(おやがみ=総氏神)である「天照大御神(あまてらすおおみかみ)様」より授けられたものであるという話があります。

「稲作」というのは、古くから日本の神々への「祀り」に密接に関係してきました。
人知を超えた自然のはたらき、神々の導きを信じた私たちの祖先は、「稲作」に関するさまざまな神事を、今日まで大切に受け継いでいます。

多くの神社が行う祭祀の中でも、5月や6月の田植えの時期に行われているのが「御田植祭(おたうえさい・おたうえまつり)」というもの。
地域によって、その形式や詳細は異なる場合も多いのですが、田植えが行われる時期に実際に田んぼに稲の早苗を植えてゆくものや、神社の境内でその仕草を模して行われるものまで、さまざまです。

その中の一例ですが、田の神様に対して、巫女たちによる舞や、田楽の奉納なども行われます。
また、神様に捧げる「御神饌(ごしんせん)」を育てるための田んぼ(神饌田)がある神社では、そこで装束をまとった早乙女や田作男が、昔懐かしい形で手作業の田植えを行います。この田んぼで作られたお米は、神社の神様の「御饌米(みけまい)」としてお供えされたり、御神酒を作るのに用いられたりもします。
神様からのお恵みは、まず一番に神様に御奉納し、御礼をお伝えしなくてはいけませんよね。

「御田植祭」は、同じ意味を持つ呼び方に「田遊び」というものがあります。
これは一年のはじめにその年の実りを祝う予祝儀礼として、田起こし・種蒔き・田植え・稲刈り・倉入れに至るまでの稲作課程を模倣するお祭り。
その他にも、豊作を祈る「祈年祭」や、収穫に感謝する「収穫祭」、神様と食を共にする「新嘗祭」など……稲作にまつわる祭祀は、神社において欠くことのできないものです。

私たちが大好きなお米が食べられなくなる生活なんて、今の時代においては想像もつかないことかもしれません。
でもそのお米も、日本の水の豊かさや太陽の光など、自然の恵みなくしては決して生まれないものです。
そして全国各地にある田んぼでは、今も多くの方が、大切に稲を育ててくださっている。だからこそ、私たちは美味しいお米を食べることができています。

つまり、自然界からいただく神々の司る力と、多くの人の手が加わることによって豊かに実る稲は、とても神聖で尊い存在なのです。
日々いただくお米にも、決して感謝を忘れずに。私たちは、その一粒だって無駄にしないように、生きていかなくてはいけませんね。

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紺野うみ

巫女ライター・神職見習い
東京出身、東京在住。好きな季節は、春。生き物たちが元気に動き出す、希望の季節。好きなことは、ものを書くこと、神社めぐり、自然散策。専門分野は神社・神道・生き方・心・自己分析に関する執筆活動。平日はライター、休日は巫女として神社で奉職中。

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