こんにちは。巫女ライターの紺野うみです。
日本には、全国各地に特徴的で印象深い「祭」が存在しているものですが、中でも有名どころとして名前が挙がることの多い「ねぶた祭」や「ねぷた祭」。
東北の夏といえば真っ先に、この迫力満点の光景を思い浮かべる人もいらっしゃるのではないでしょうか。
「ねぶた」は木や竹、針金などの骨組みに和紙を貼り付けて作られた、巨大な灯籠(とうろう)のことを言います。
そのひとつひとつは、「ねぶた師」がモチーフとなる題材を考え、一年かけてゼロから制作される超大作。
その起源は、七夕の夜に海や川に穢れを流し無病息災を祈る、禊(みそぎ)の行事である「灯籠流し」だと伝えられています。
東北地方では秋の重要な収穫を前にして、労働の妨げとなる睡魔を人形に託して祓う「眠り流し」という習慣がこのような祭に発展しました。
「眠たい」という言葉が訛って「ねぶたい」という方言になり、「ねぶた」や「ねぷた」に転じたようです。
「ねぶた」と「ねぷた」の違いについては、形状や特徴の違いで明確に分けることができないため、地域の訛り方で呼び名に微妙な差異が生まれたものといわれています。
ねぶた祭・ねぷた祭は、青森県内の各所で7月中旬から8月中旬頃にかけて開催されていますが、特に有名なのは「青森ねぶた祭(8月2~7日)」と「弘前ねぷた祭(1~7日)」です。
「青森ねぶた」の山車(だし)は、「ラッセーラ、ラッセーラ、ラッセーラッセーラッセーラ」という軽やかなテンポの掛け声に合わせて、勢いよく町を曳(ひ)かれてゆきます。
お囃子に合わせて跳ねるように踊る、元気な「跳人(はねと)」と呼ばれる踊り手にもご注目。実はこの祭は「跳人」の衣装さえあれば、誰でも自由に参加できるのも特徴です。
「弘前ねぷた」の山車は、ゆったりとした「ヤーヤドー」という掛け声に合わせて、厳かな雰囲気で町を練り歩きます。
扇を広げた形に絵付けがされた「扇ねぷた」が弘前の主流で、前面は「鏡絵」、背面は「見送絵」になっているので、それぞれのテーマやタイトルをチェックしながら両面じっくり見るのがおすすめです。
この2つは「動の青森」「静の弘前」とも表現され、同じ青森で行われる同じ由来の祭でありながら、その違いがおもしろいですよね。いずれも国の重要無形民俗文化財に指定されていて、全国津々浦々から見物客や参加者が集い、毎年多くの賑わいを見せています。
夜の闇に煌々と浮かび上がる圧巻のねぶたは、いつの時代も人々の心を明るく照らし出したに違いありません。多くの人が集い共に熱狂する素敵なお祭りなのですが、2020年は残念ながら新型コロナウイルス感染症の影響で中止となってしまいました。
日本の誇るこの祭が再び開催され、あの勇壮なねぶたの姿と威勢のいい掛け声が、東北の夏の夜を彩ることを願ってやみません。
私たちも、どんな暗闇にあっても心の内側に灯りをともし続け、また素晴らしい文化を繋いでいける日を心待ちにしていましょう!
紺野うみ
巫女ライター・神職見習い
東京出身、東京在住。好きな季節は、春。生き物たちが元気に動き出す、希望の季節。好きなことは、ものを書くこと、神社めぐり、自然散策。専門分野は神社・神道・生き方・心・自己分析に関する執筆活動。平日はライター、休日は巫女として神社で奉職中。
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