こんにちは。写真家の仁科勝介です。
私たちは同じ日本でも、変化に富む土地の中で生きています。日本には1700を超える市町村がありますが、ひとつひとつの土地でたった1年間暮らそうと思えば、1700年掛かります。さすがに命が足りません‥‥。
また、二十四節気をはじめとする暦も、土地によって暦の捉え方が特徴的であると思います。
たとえば1月下旬にかけて、北海道のオホーツク海にやってくる流氷は、春の季語です。立春を迎える頃にやってくることも、理由のひとつです。さらに、知床では4月に流氷が去って、港の船が往来できるようになることを「海明け」と呼びます。長く港を閉ざしていた流氷は、ゆらゆらと小さくなって、海を漂い始める。その一連の流れの中に、春があります。
先日、知床在住の方とお話しする機会があって、印象的だったのは、「流氷が接岸すると、海岸沿いの気候から内陸型の気候に変わる」ということでした。海が流氷によって閉ざされることで、地形が変わり、気候も変わるのだと。自然の大きさを感じるばかりです。
これは知床の話で、1700分の1つ。小さな暦と季節の関係性が、同じ日本の中に、ほかにも数えきれないほどある。日本は不思議で、面白いです。
そして、春から日本の旅に出る予定です。数年は掛かるだろうと思っています。その前に、写真を整理してみました。
長崎県の小値賀島。五島列島の北にある、小さな島です。
島根県邑南町。石州瓦の屋根が美しいです。
愛媛県四国中央市。奥には工業地帯が広がります。
三重県熊野市。トンネルを抜けた先に、まちが見えました。
富山県南砺市。相倉合掌造り集落の夏です。
茨城県茨城町。開けた道が続きます。
青森県東通村。本州のずっと北に、寒立馬という馬がいます。
日本のふるさとの数を思うと、暦と土地の関わりについては、人生のどれだけの時間を費やしても、すべてを体験として知ることはできません。ですから、私にとって暦の言葉を知ることは、「わからないことを増やす」ことでもあります。暦を通して知らない土地の文化や風習、考え方と出会う。そして、想像する。わかりやすさが求められる世の中ですが、暦と土地の関係性は、日本という土地がある限り、簡潔明瞭にはならないでしょう。共通項であり、差異でもある存在が「暦」だと感じますし、暦があることがどれだけ日本において大切であるかを、暦生活さんでは、学ばせていただくばかりです。
写真:仁科勝介
仁科勝介
写真家
1996年岡山県生まれ。広島大学経済学部卒。2018年3月に市町村一周の旅を始め、2020年1月に全1741の市町村巡りを達成。2020年の8月には旅の記録をまとめた本、「ふるさとの手帖」(KADOKAWA)を出版。好きな季節は絞りきれませんが、特に好きな日は、立春です。
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