七月に入り、町にも願いごとを書いた短冊をつけた笹飾りが目立つようになりましたね。日本の夏の風物詩とも言える七夕はもうすぐです。
七夕は「七夕の節供」とも呼ばれ、五節供の行事のひとつ。日本で行われてきた七夕行事は、織姫と彦星にまつわる中国の星まつりの物語や、日本に古くから存在する水神様への信仰、さらにはお盆の先祖供養の習俗など、さまざまな文化や習俗が合わさって、時代とともに変化しながら、現代まで続いてきたものといえます。

貴族社会ではじまった七夕行事が、庶民にも広まったのは江戸時代のこと。当時の浮世絵には、町中で無数の長い笹が屋根より高く飾られている様子や、華やかな飾り物が描かれています。近世後期の江戸の人々は、現代のわたしたちよりもずっと楽しんで七夕を祝っていたのかもしれません。

七夕に欠かせない行事食のひとつが、素麺でした。
そもそもは貴族社会において七夕の供物として供えられた「索餅(さくべい)」という食べ物が、素麺のもとになったと言われています。中国から伝わった唐菓子のひとつで、小麦粉を捏ねて、ねじって揚げるなどして作られました。その索餅を作る過程で、やがて生地を伸ばすようになり、室町時代の後半には、現在のような素麺が生まれたとされます。

江戸時代後期の江戸では、七夕に素麺を食べたり、節供やお盆の贈り物としても用いたりしていました。喉越しの良い素麺は、江戸の人々にも好まれたのでしょうね。

一方、農村地域では、ちょうど小麦の収穫期にあたるため、小麦粉を使った行事食が作られたところもあります。
例えば、長野県の松本地方では、月遅れの8月7日の七夕に、小麦粉で作ったほうとうや饅頭を食べる習慣があり、現在も続いています。紙などで作った七夕人形を軒下に飾り、瓜や茄子といった季節の野菜とともに、甘い餡やきな粉をからめたほうとうをお供えするのです。
ところかわれば、行事の風習もさまざま。今年はいつもと違う行事食で、七夕をお祝いしてみるのも良いですね。

清絢
食文化研究家
大阪府生まれ。新緑のまぶしい春から初夏、めったに降らない雪の日も好きです。季節が変わる匂いにワクワクします。著書は『日本を味わう366日の旬のもの図鑑』(淡交社)、『和食手帖』『ふるさとの食べもの』(ともに共著、思文閣出版)など。
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