こんにちは。巫女ライターの紺野うみです。
神社では、一年を通じて多くの祭典が行われていますが、お祀りされている神様によって異なる「ご縁日(その神様に深く関わる日)」にまつわるお祭りは、神社によってさまざまなものがあります。
その中でも、今回ご紹介するのは「酉の市」。
これは、毎年11月の「酉の日」に「倭建命・日本武尊(ヤマトタケルノミコト)」という神様をお祀りする、大鳥神社を中心とする社寺に立つ市のこと。
起源は江戸時代の頃、東京都足立区にある大鷲(おおとり)神社の近くに住む農民が、収穫の感謝として酉の日に鶏を奉納したことと伝えられています。
ヤマトタケルノミコトという神様は、日本神話の中でもとても強い武神で、かつては特に武士の信仰を集めていました。現在は、開運招福・立身出世・商売繫盛・厄除けなどのご神徳で、多くの人に親しまれています。
そういえば、日本の暦ならではの捉え方である「酉の日」というのも、日頃から意識している方は少ないかもしれません。
十二支と言えば、十二種類の動物が年ごとに巡ってゆくことは有名ですが、実は月や日にも十二支の巡りがあるのです。
「酉の日」も12日に一度やってくるわけですが、酉は「とりこむ」という言葉を連想することから、商売繫盛の縁起を担ぐ動物とも言われています。
そこで酉の市では、福や財を「かき込む・かっこむ」ことができる道具として縁起物の「熊手」が売られます。
「鷲が獲物を掴む様子」からも、福や財を「鷲掴み」できるように、という願いが込められているのだとか。
市で売られている熊手には、打ち出の小槌に小判に米俵、招き猫に鶴亀に鯛、七福神などなど……。とにかく縁起の良いものが、ふんだんに飾り付けられています。
たくさんの出店を回りながら、賑やかで個性的な熊手を、じっくりと一つひとつ見て回るのも酉の市の醍醐味かもしれません。
事業や商売を行っている人は特に、年々熊手のサイズを少しずつ大きくしてゆくことで、「発展・成長」を祈るのが吉とされているようです。
どこまで大きくしていけるかは分かりませんが、「来年はもっと大きな熊手が買えるようにがんばろう!」と思うと、なんだか気持ちも前向きになりそうですよね。
大鳥信仰の神社としては、大阪府堺市にある「大鳥神社」が総本社なのですが、熊手の出店が立ち並ぶ「酉の市」の光景は関東地方ならではのもの。
日本のお祭りは地域ごとの個性を楽しむことができるものですが、関東の下町から広がったこの酉の市は、いわゆる「江戸っ子」にとって年末年始に向けて気持ちを高揚させる一大イベントだったに違いありません。
11月に入って最初の酉の日を「一の酉」、次を「二の酉」、年によってはさらに「三の酉」が巡ってくることもあり、暗くなるまで神社が屋台や出店で賑わいを見せています。
令和5(2023)年の酉の市は、一の酉が11月11日(土)、二の酉が11月23日(木)です。
ぜひ、お近くで酉の市が開催される方は、いつもと違った神社の光景を見に足を運んでみてくださいね。
紺野うみ
巫女ライター・神職見習い
東京出身、東京在住。好きな季節は、春。生き物たちが元気に動き出す、希望の季節。好きなことは、ものを書くこと、神社めぐり、自然散策。専門分野は神社・神道・生き方・心・自己分析に関する執筆活動。平日はライター、休日は巫女として神社で奉職中。
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