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白酒しろざけ

暦とならわし 2024.03.01

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こんにちは。巫女ライターの紺野うみです。

日本に古くから伝わる3月の行事といえば、やはり3月3日の「ひな祭り」が一番に挙げられるのではないでしょうか。

この日は特に、女の子の健やかな成長を祝うのが習わしで、お店で見かけるひな祭りのコーナーなどでは、桃色・白色・若草色などの春を感じさせる柔らかな色が心を和ませてくれますね。

ひな祭りの行事食と言えば、ちらし寿司に蛤のお吸い物、ひなあられやひし餅などが思い浮かびますが、伝統的な飲み物には昔から「白酒(しろざけ)」が飲まれてきました。

そう言えば、有名な童謡『うれしいひなまつり』の中でも、「♪すこし白酒めされたか あかいお顔の右大臣……」という一節が出てきます。

私も幼い頃にこの歌を教えてもらったとき、「普段は真面目に違いない大臣様も、お酒を飲んで顔が赤くなってしまうなんて、よっぽど美味しいお酒なんだろうな」と面白おかしくイメージしたものでした。

もちろん、白酒とはアルコール入りのお酒のひとつですから、主役の子どもたちにはご縁がありませんよね。

見た目もその名前の通り白く濁ったお酒なので、甘酒と同じなのかと間違われることもあるのですが、その二つは似ているようで異なる飲み物です。

白酒とは、みりんや焼酎などのお酒にもち米や米麹を入れて熟成させ、最後にできたもろみを軽くすり潰して造るお酒のこと。

とろりとした口あたりや甘さは甘酒にも似ているかもしれませんが、歌の中でも右大臣が顔を赤くしてしまうくらいですから、アルコール度数は結構高めです。

こちらは大人の楽しむ飲み物として、子どもたちはちょっと白酒に似ているけれど、ノンアルコールの「麴甘酒」がピッタリかもしれませんね。

さて、ひな祭りは別名「桃の節句」とも呼ばれますが、正式には「上巳の節句」と言って、古代中国の文化が季節の節目として日本の暦にも取り入れられ、定着したもののひとつです。

節句は5月5日の端午の節句も含めて、全部で5種類の「五節句」があるのですが、いずれもこの節目には新しい季節を迎えるための「祓い」や「清め」の儀式が行われてきました。

上巳の節句に飲まれるようになったこの白酒も、その由来には諸説あるようですが、大きく捉えると邪気を祓う「祓い清め」の意味が込められています。

上巳の節句と一緒に中国から伝わったのは、不老長寿を与え邪気を祓うとされた「桃」の花を酒に浸した、風流な「桃花酒(とうかしゅ)」というお酒でした。

江戸時代にとある酒屋が、夢のお告げ通りに白酒を作ったところ、それが大流行して桃花酒の代わりに飲まれるようになったという説。

また、その身に大蛇を宿した女性が、3月3日に白酒を飲んで大蛇を追い出したという逸話から、身の穢れを洗い流すために白酒が飲まれるようになったという説もあります。

このような季節の行事には、節目節目で自身の心と体を綺麗にして、気持ちを新たに過ごすといった意味が込められていることが多いものです。

それと同時に、大切な子どもを少しでも災厄から守り、健やかな成長を切に願う親の愛情から受け継がれた文化もたくさんあります。

時代を超えて残された習わしの中には、先人たちのさまざまな知恵と工夫、そして祈りが込められているのですね。

受け継がれる行事の中に「なぜだろう」「どうしてだろう」という疑問を見つけたら、その文化の裏側を、そっと紐解いてみませんか?

きっと、時代が違えど変わることのない、人の愛や祈りが隠されているはずですよ。

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紺野うみ

巫女ライター・神職見習い
東京出身、東京在住。好きな季節は、春。生き物たちが元気に動き出す、希望の季節。好きなことは、ものを書くこと、神社めぐり、自然散策。専門分野は神社・神道・生き方・心・自己分析に関する執筆活動。平日はライター、休日は巫女として神社で奉職中。

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