こんにちは。巫女ライターの紺野うみです。
昨今の長い猛暑においては、早ければ5月頃から少しずつ「暑さを感じる日」が増え始め、9月に入ってもまだまだ残暑が抜けない、なんてことも珍しくありません。
年を追うごとに、夏という季節がずいぶん長くなり、秋はかなり短くなってしまったものだなぁ……と感じさせられます。
8月も半ばを過ぎ、そろそろ暑さの出口を探し始めたい――、そんな頃。
夜になると、「少しは涼しくなったかな?」と期待をして、窓を開けたり外に出てみたりしたくなります。
そうして、夜の中にほんのわずかでも秋の気配を感じることができると、とてもうれしくなるものですよね。
今回ご紹介する言葉は「夜の秋」。
うっかり見間違えてしまうかもしれませんが、大切なポイントは「秋の夜」ではなくて、「夜の秋」という部分。
秋とついてはいるものの、「夜の秋」は夏(晩夏)の季語。そして、まるで双子のようにも思える言葉「秋の夜」は、文字通り秋の季語です。
具体的な時期としては、立秋前――土用期間の半ば頃を過ぎた、夏の夜を指しています。
つまり「夜の秋」を使う場面において、季節自体はまだ「夏」なのですが、それでも夜の中に感じられる「秋」の予感を巧みに感じ取り、訪れる本格的な涼しさを心待ちにしているという日本語的な情緒あふれる言葉なのですね。
かつて「夜の秋」と「秋の夜」は同じく秋夜のことを指していたようですが、近代以降に「夜の秋」が夏の季語に転じて使われるようになったとのこと。
もともと夏の終わりというのは、ちょっと哀愁漂う雰囲気を感じさせるものだったように思えますが、近年の猛暑に至っては一転。夜の中の涼しさが、やっと訪れる秋への期待を思わせるものに変わりつつあるようにも思えてなりません。
いずれにしても「季節」というのは本来、いつからいつまでとハッキリ区切られて訪れるものではなく、グラデーションのように淡くゆっくりと移ろいゆくもの。
それをいかに丁寧に感じ取り、その移り変わりを五感で楽しむことができるかどうかが、人の心を豊かで柔らかなものにしてくれるような気がするのです。
真夏の蒸し暑い夜が、いつしか秋の涼風吹く夜へ。
昼間の賑やかな蝉の声が、いつしか夜に響く虫の声へ。
少しずつ少しずつ、巡ってゆく季節の有様を、感じながら過ごしていきたいものです。
せっかくなら、晩夏の間にこそ夏ならではの風物詩やイベントを楽しみ尽くして、心残りなく秋を迎えてみてはいかがでしょうか。
私は今年、「夜の秋」が感じられる日に、線香花火をやりたいなぁと思っています。
皆様は、どんな「夜の秋」を過ごされるでしょうか?
紺野うみ
巫女ライター・神職見習い
東京出身、東京在住。好きな季節は、春。生き物たちが元気に動き出す、希望の季節。好きなことは、ものを書くこと、神社めぐり、自然散策。専門分野は神社・神道・生き方・心・自己分析に関する執筆活動。平日はライター、休日は巫女として神社で奉職中。
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