朝晩は冷え込むようになり、そろそろ衣替えの季節がやってきました。
春夏に使い込んだ洋服たち。現代では、自宅で洗濯したりクリーニングに出してから収納する人が多いと思いますが、昔はどこの家でも「虫干し」が盛んに行われていました。
虫干しとは、虫やかびがつくことを防ぐために風通しをよくし、日に当てることを言います。衣類だけではなく、書物や着物などの調度品に対して、年に3回ほど行うことを総称して「虫干し」と言いました。
・7月下旬〜8月頃、夏の土用に梅雨の間についた湿気を取り除く「土用干し」
・10月下旬〜11月頃、爽やかな風が吹くときに行う「虫干し」
・1月下旬〜2月頃、空気が乾燥する季節に風通しをよくしておく「寒干し」
虫干しの歴史は古く、平安時代には宮中行事のひとつとして行われていました。
地域によってその呼び方も様々ですが、もともとは中国から伝わった「曝涼(ばくりょう)」にならっています。平安時代の初期には、正倉院や他の寺社で蔵物の虫干しが行われていました。現代では虫干しをかねて、本尊や秘仏、宝物類の拝観を公開をするところが多くなっています。
虫干しは、2日以上晴れが続いて乾燥した日の午前10時頃から午後2時頃までに行います。窓を開け放って風通しをよくし、衣類や書物などを広げて風が十分に入るようにします。
そもそも、昔の人は日常着として「着物」を身につけていました。
タンスも木製でしたので、長くしまっておくとどうしても湿気がこもりがち。着物は高級品でもありましたから、虫食いや変色、型崩れを防ぐために虫干しを行い、風の向きに網を張って着物をかけていました。収納するときも、着物についたちりを払い、畳んで防虫剤と一緒に風呂敷に包んでいたそうです。
現代では昔のようにわざわざ虫干しをしなくても、除湿機を使ったりクリーニングに出せばいいですし、傷ついたり汚れてしまったらまた同じものが手に入ります。
ですが、そんな中でも自分にとっての「大切な一着」があるのなら、いつもより少し手間ひまをかけてみるのもいいかもしれません。
おばあちゃんやお母さんから受け継いだもの、旅先で買ったもの、大切な人からプレゼントされたもの...。大切な一着というのは人それぞれだと思いますが、たとえ高価なものでなくても、「長く使いたい」という真っ直ぐな気持ちが、愛着と一緒に心の安らぎも育ててくれると思います。そう考えると、昔の人の「もったいない」から生まれる工夫には、生きる知恵が詰まっているなぁと思います。
窓を開け放って風通しをよくしながら、ものも心も清々しく。
今年は虫干しを通して、大切なものとの関係を見つめ直してみるのはいかがでしょうか。
高根恭子
うつわ屋 店主・ライター
神奈川県出身、2019年に奈良市へ移住。
好きな季節は、春。梅や桜が咲いて外を散歩するのが楽しくなることと、誕生日が3月なので、毎年春を迎えることがうれしくて待ち遠しいです。奈良県生駒市高山町で「暮らしとうつわのお店 草々」をやっています。好きなものは、うつわ集め、あんこ(特に豆大福!)です。畑で野菜を育てています。
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