4月に入り、二十四節気は「清明」を迎えました。
春らしいうららかな陽気のもと、木々も生き物も人間も一斉に動き出して活力溢れる時季。そんな湧き立つ雰囲気のなか、4月8日には「花祭り」が行われます。
花祭りとは、お釈迦さまの誕生日を祝う仏教行事です。当日は日本各所の寺院で、たくさんのお花を飾った「花御堂(はなみどう)」が用意され、参拝者は花御堂の中心に安置されたお釈迦さまの像に柄杓で甘茶をかけてお祝いします。
甘茶を「仏」さまへ「灌ぐ」ことから、正式名称は「灌仏会(かんぶつえ)」とも呼ばれ、ほかにも「竜華絵(りゅうげえ)」「仏生会(ぶっしょうえ)」「花会式(はなえしき)」「降誕会(ごうたんえ)」「浴仏絵(よくぶつえ)」などの別名もあります。
そもそもなぜ、お釈迦さまに甘茶をかけるのでしょうか。
言い伝えによると、お釈迦さまが誕生したときに九つの頭を持つ龍が天から降りてきて、甘露の雨で産湯を満たしたという伝承がもとになったと言われています。日本では、江戸時代までは色々な香料が入った香水(五色水)が使われていたようですが、次第に甘茶を甘露に見立てて使うようになったそうです。
また、お釈迦さまの像は片手を上に挙げているのですが、これは誕生したときのポーズを表していると言います。生まれてすぐに七歩歩き、右手で天を左手で地を指して「天上天下唯我独尊」(てんじょうてんげゆいがどくそん)と言ったのだとか。「唯我独尊」の「我」は、お釈迦さまだけのことではなく、すべての人間のことを言い、いのちのままに尊いということを説いていると言われています。
意味は諸説あるそうなのですが、お釈迦さまがどれほど偉大な方だったのか...。このお話からよくわかりますね...。
私は以前、実際に「花祭り」に参加させてもらったことがあります。
知り合いの浄土宗のお寺でやっていることを知り、興味があったので参加してみました。
会場へ行くと、入り口からお祝いムードで溢れていました。花御堂の周りには彩り豊かなお花がたくさん飾ってあり、ここは現世なのか...?と思ってしまうほど華やかな装い。お釈迦さまの像に甘茶をかけてみんなでお祝いしました。
お寺の中では、お経を聞いたり読んだりした後で、お坊さんの説法がはじまりました。
お釈迦さま誕生の話からはじまって、「生きるとは」「悟りとは」など壮大なテーマから、日頃の私たちの暮らしにつながる色々な話へと広がりました。まるで禅問答をしているかのような濃密な時間で、すぐに答えが出なくても後々ふっと思い出して救われる。そんな瞬間が、この先訪れることがあるのかもしれないなぁとぼんやり思いながら、聞いたことを思い出します。
日本には全国各地、季節ごとに色々な風習がありますが、興味があれば積極的に参加してみてもいいかもしれません。どんな経験でもたのしむ気持ちさえあればきっと、未来につながる時間となるのだろうと思います。
参考
下中 弘 『世界大百科事典』平凡社( 1997年)

高根恭子
うつわ屋店主
神奈川県出身、2019年に奈良市へ移住。
好きな季節は、春。梅や桜が咲いて外を散歩するのが楽しくなることと、誕生日が3月なので、毎年春を迎えることがうれしくて待ち遠しいです。奈良県生駒市高山町で「暮らしとうつわのお店 草々」をやっています。好きなものは、うつわ集め、あんこ(特に豆大福!)です。畑で野菜を育てています。
