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七十二候/雷乃発声かみなりすなわちこえをはっす

二十四節気と七十二候 2022.03.31

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七十二候では「雷乃発声(かみなりすなわちこえをはっす)」を迎えました。

春雷やぽたりぽたりと落椿 たかし

濡れた落ち椿が一層、鮮やかに地面を染めています。

「龍天に登る」という季語をご存知でしょうか。

龍は「春分にして天に登り、秋分にして淵に潜む」。中国の最古の字解『説文解字』に記されたこの一文から、「龍天に登る」は春分の頃の季語となり、「龍水に潜む」が秋分の頃の季語になっています。『説文解字』の前文にはこう書かれています。

龍は鱗虫の中の長なり、能(よ)く幽かに、能く明らかに、能く細に、能く巨に、能く短に、能く長なり、春分にして…

啓蟄のときに説明しましたように、虫というのは蛇のこと。「龍は鱗(うろこ)のある蛇の中の長(かしら)であり、時にかすかであったり、明瞭であったり、小さかったり、巨大であったり、短かったり、長かったりする」。この表現はやはり雨を思わせます。

昔は旱(ひでり)、長雨、洪水は、いずれも飢饉の原因となって多くの人々が命を落としたため、順当に降る雨はなによりも重要なことでした。龍神伝説は農耕生活と深く結びついています。

春になると龍が天に登って雲を起こし、稲の成長に欠かせない恵みの雨を降らせ、その役目を終える秋にはまた水の底に帰っていく。初雷(はつらい)を、祈りをもって迎えたであろうことは容易に想像がつきます。

この季語に呼応するように七十二候でも、春分の末候「雷乃発声(かみなりすなわちこえをはっす)と、秋分の初候「雷乃収声(かみなりすなわちこえをおさむ)が対になっています。春の雷はまさに龍神様のおでましです。

ここ数年は、春いちばんの風も、雷雨も、花の開花も、全体に早めに推移している印象があります。年の最初が狂うと後半にも響いて天候不順になりがちです。七十二候はそうしたズレをチェックして、予測するためのものでもあります。

例年通りであれば、ちょうど桜が満開をすぎた頃、雷がゴロゴロと鳴って、強い雨が降り出します。今週末にやっとお花見ができそうだ、と期待していると雨が降って、がっかりされる年が多いかとおもいますが、これはもう日本列島の定めのようなもので、お決まりの自然の摂理です。桜に雨が降ったら、きわめて順当な推移、とにっこりしていただければとおもいます。

桜の咲いている間にはもちろん、うらうらとしてあたたかい春日和(はるびより)がありますが、その天候は続かずに必ず寒の戻りがあり、ぐずついた天気になりますので、「花冷え」「花曇り」などの季語があります。

そして必ず風の強い日も訪れますので「花に嵐」、「花発(ひら)いて風雨多し」ともいいます。花びらが巻き上げられるように空高く舞う「花吹雪」は毎年見られる光景です。

春の雷はどこか懐かしく、無事に春を迎えられた安堵感があります。夏のように激しい被害を出すこともなく、大きな雷はせいぜい数回鳴る程度で去ってゆき、遠くでゴロゴロと鳴っている音は優しくも感じます。

春はどこまでも雨と風、雨と風の繰り返しです。風が吹く度に春がきて、雨が降る度に芽吹きが進みます。

文責・高月美樹

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高月美樹

和暦研究家・LUNAWORKS代表 
東京・荻窪在住。和暦手帳『和暦日々是好日』の制作・発行人。好きな季節は清明と白露。『にっぽんの七十二候』『癒しの七十ニャ候』『まいにち暦生活』『にっぽんのいろ図鑑』婦人画報『和ダイアリー』監修。趣味は群馬県川場村での田んぼ生活、植物と虫の生態系、ミツバチ研究など。

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