雨水 2月19日~3月4日 正月節〈春の気立つをもってなり『暦便覧』〉
つげ櫛と椿油で、冬越しの乾燥に潤いを
雨水となりました。「雪散じて水と為る也」の言葉どおりのこの節気です。気温が少しずつ上がってきて、草木の芽も吹き始めるころ。ひだまりにはオオイヌノフグリの青い花が見つかるでしょう。春の訪れを少しずつ待つ、そんな季節です。
ところで、中国伝来の「二十四番花信風」をご存知でしょうか。それぞれの季節にあわせて、風に花の名を冠したものです。二十四節気の小寒から穀雨までの八節気の、初候、次候、三候の計二十四候の風なので、「二十四番」なのですね。
たとえば、雨水の初候は菜花、次候は杏花、三候は李花となっています。が、やはりこれだと日本の感覚とは少しずれますね。そこで、勝手にオリジナルの花信風を考えてみました。
実際の二十四番花信風では、椿は小寒の次候にあてられていますが、やはり少し早すぎる感じがします。雨水のころには、椿の花が咲き始めています。そんなわけで、雨水にあてる花信風には、椿を選ぶのはどうでしょう。椿は品種も多く、花期も長い花です。寒椿は寒い時季から咲き始めますし、各地の椿園では主に2月の後半から3月が見頃です。冷たい中にもかすかに暖かな春の粒が混ざる、そんな風をふと感じる雨水のころ。心が浮き立ちます。
さて、椿といえば、椿油。柔らかな使い心地で、お肌に髪に潤いをもたらしてくれるうれしいオイルです。伊豆大島産の椿油が有名ですが、先日伊豆へ行ったとき、同じ伊豆七島でも利島産の椿油を見つけました。こちらも試してみると、豊かなしっとり感でただいま愛用中。

冬の乾燥した空気をサバイブしてきた髪や肌には、椿油をたっぷり使って潤いを。そして、椿油と相性がいいのがつげ櫛です。使っているうちに、櫛の方にも油が浸透して柔らかに、しかも丈夫になってきます。髪を梳くにも通りがよく、使い心地満点に。

つげ櫛をつくる職人さんの技を見たことがありますが、目にもとまらぬ速さで一本ずつ歯を削っていくのですね。美しい一本の櫛が出来上がるまでには数多くの工程を経ます。バランスの取れた完璧な形は、遠く奈良時代にまで遡るとも。
つげ櫛は一生ものだといわれます。長く使っていると、次第に歯の角も取れてきて、全体がなめらかに。使うほどに愛着が湧いて、決して飽きることはありません。
女の子が生まれたらつげの木を植えて、その子のお嫁入りのときはそのつげの木で櫛をつくって嫁入り道具として持たせる地方もあるのだとか。それを聞いて、自分と一緒に育ったつげでつくられた櫛と一緒にお嫁入りする気持ちは一体どんなものだろう、と想像が膨らみました。
この春はぜひ、椿油とつげ櫛で冬ごしの乾燥に潤いを。

平野恵理子
イラストレーター、エッセイスト
1961年静岡県生まれ。著書に『五十八歳、山の家で猫と暮らす』『歳時記おしながき』『こんな、季節の味ばなし』ほか多数。好きな季節は、季節の変わり目。現在は八ヶ岳南麓在住。
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