◎立春 2月3~17日 「梅と鶯」
さあ立春、また新しい暦の始まりです。この立春からは、また新しいテーマで進めていきましょう。そのテーマは、「花鳥でめぐる二十四節気」です。
花鳥というとずいぶん古風で典雅なイメージがありますが、自然とともに季節を感じて暮らしてきた日本の心には、ぴたりと寄り添うものでもありましょう。なるべく親しみのある花や鳥をえらんで、二十四節気を巡る一年を過ごしてみたいと思います。

立春は、二十四節気の最初の節。春が始まったという節気ですが、実は気候的にはまだまだ寒い冬の陽気です。それでも、空気のどこかには春が近づいていると感じさせられます。「春立つ」「春来る」の言葉だけでも、心持が少しアップしてくるのでは? 日足が少しずつ伸びて、それだけでもうれしくありがたい。そんな初春の季節です。
立春のころに漂ってくるいい香りといえば、梅の花。甘くもキリリとした梅花の香りはこの季節ならではです。葉に先駆けて、枝から直接花を咲かせる小さな花は、春の訪れを真っ先に感じさせてくれます。白梅、紅梅、どちらも甲乙つけ難い魅力です。清少納言は、『枕草子』で「濃きも薄きも紅梅」と紅梅に軍配をあげていますね。
五弁の梅の花は形が整っているので、さまざまな意匠のモチーフにもされています。「香い梅」「むすび梅」「光琳梅」などの文様にもなっていますし、着物の小紋の柄や、花をかたどった和菓子も数々つくられています。日本の暮らしに奥深く根ざしているのが梅の花なのですね。

この時季、各地の梅園では開花と同時に見物客も多く訪れます。梅の花を見、香りをたっぷり味わって、春の訪れを実感できることでしょう。歌川広重作『名所江戸百景』中の「亀戸梅屋舗」は、梅見の様子がよく伝わってきてみごとです。白い花の咲いた梅の木の間をそぞろ歩いたり、赤い毛氈を敷いて寛いだりしている人々が、梅の木の間に見え隠れしています。絵を見ているだけで、梅の香りが漂ってくるよう。
その梅の木には鶯も来てさえずっているでしょうか。春の鳥といえば、それはもうどなたも思い浮かべるのが鶯なのでは? 「春告鳥」「花見鳥」「歌詠鳥」の呼び名もある、春を代表する鳥。「梅に鶯」は、日本の心に深くインプットされている組み合わせといえます。
鶯は小さな体のわりに鳴き声が大きくて、小鳥のパワーに改めて驚かされるほどです。冬の間は地鳴きといって「チャッチャッ」と鳴き、これを「笹鳴き」といいます。そして春になると「ホーホケキョ」とさえずりを始めるように。初鳴きはまだ拙いものの、次第に調子を整えて、喉を震わせて声をあたりに響き渡らせ、夏になるとうるさいほどの喉自慢。やはり鶯の鳴き声は、春の初々しいさえずりがちょうどいいといえましょう。
梅と鶯、この立春の時季に目にし、耳にして、春が近いことをぜひ実感してください。

平野恵理子
イラストレーター、エッセイスト
1961年静岡県生まれ。著書に『五十八歳、山の家で猫と暮らす』『歳時記おしながき』『こんな、季節の味ばなし』ほか多数。好きな季節は、季節の変わり目。現在は八ヶ岳南麓在住。
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