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花鳥でめぐる二十四節気/芒種ぼうしゅ

二十四節気と七十二候 2025.06.05

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◎芒種 6月5~20日  「クチナシとカイツブリ」

夏の節気も芒種となりました。「芒(のぎ)」のある穀類を植え付けるという時節です。長雨の季節、昔の感覚でいえば、農家は田植えを始める大忙しのころ。ただ、近年は田植えをする時期は全体的にもっと早くなっていますね。

とはいえ、このころに梅の実が黄色く熟し、蛍が飛び交うのは今も昔も変わりありません。気温も安定し、雨に濡れて育つあれこれが生命を謳歌するときです。

水辺へ行くと、水鳥たちの姿がよく見えます。潜水の上手いカイツブリが可愛らしく、目につきます。水鳥としては小柄な方です。水面移動をしていたと思うとスイッと水中に姿を消して、思いがけない方でピョコリと水面に現れます。目で追っていると飽きません。いつまででも見ていられるのです。

カイツブリは浮き草を使って水上に巣を作って子育てをします。まさに浮島の家。綿毛に包まれた雛は、自分でも泳げますが、親鳥の背中に乗って移動することも。その様子がまた愛くるしくてたまりません。

池のほとりに立ってカイツブリを夢中で眺めていたら。気が付くと、いい香りに囲まれていました。はて。

そうなのです。ちょうどカイツブリの子育てと花期の重なるのがクチナシ。真っ白な花は香り高く、あたりを甘い香りで包みます。その芳香は、心なしか酔ってしまいそうなほど濃厚です。その香りだったのですね。

花のあと、クチナシの実は楕円形で赤黄色に熟します。その実は染料として使われます。お正月の栗きんとんづくりにクチナシの実は欠かせません。白餡を、鮮やかな黄色に染めてくれるのです。お正月の準備には、まだまだ間がありますが。

今ヨチヨチしているカイツブリの雛鳥も、そのころにはきっと潜水上手になっていることでしょう。

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平野恵理子

イラストレーター、エッセイスト
1961年静岡県生まれ。著書に『五十八歳、山の家で猫と暮らす』『歳時記おしながき』『こんな、季節の味ばなし』ほか多数。好きな季節は、季節の変わり目。現在は八ヶ岳南麓在住。

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