◎小暑 7月7~21日 「テイカカズラとヨタカ」
小暑となって、暑気に入りました。暑中見舞を出す時節です。夏至を過ぎて、すでに少しずつ日が短くなっていますが、そうはいっても暑くてあつくてあまりそんな実感もありません。これから小暑そして大暑と、暑さは極へ向かって厳しくなっていくのですから。
梅雨明け間近で天候が大荒れになることもしばしば。それにしても、今年の梅雨は暑さが勝って、雨があまり降らずに明けてしまった地域も多いですね。これから長く続くであろう酷暑と水不足が心配です。
さて、この季節に咲く香りのいい花は、ジャスミン、スイカズラ、ニオイバンマツリなどいくつもありますが、テイカカズラもそのひとつ。蔓性の木で、山野に多く生えています。艶のある明るい緑の葉によく映る、白い花が多数。5つに裂けた花びらはプロペラのようによじれています。真ん中がほんのり黄色で、それがポイント。次々に花を咲かせて夏のあいだ楽しめるので、庭木としても人気です。
庭に漂う芳香にうっとりしながら、夏は少し早めの入浴を。夕方少し暗くなり始めたころお湯に浸かっていると、裏の林から珍しい鳥の声が。
「キョキョキョキョキョ・・・」
なんの鳥だろうと、鳴き声をたよりにあとで図鑑を調べてみると、どうやらヨタカのようです。ヨタカは、夏の夕暮れから飛び回って虫を捕るのだそう。
そういえば、この土地で生まれ育った方から聞いたことがありました。その人が子供のころは、夏の夕方になるとヨタカが虫を追って何羽もあたりを飛び交っていたのだそう。そんな様子を見たかったなあ。このごろは、この山村でもだいぶ数が減ったのでしょう。初めて聞いた鳴き声でした。
これからしばらくは暑さの厳しい日が続きます。昼間の汗はすぐに流したい。お風呂には早めにはいることにしましょう。ヨタカの声が、また聞こえてくることを期待して。
イラスト提供:平野恵理子

平野恵理子
イラストレーター、エッセイスト
1961年静岡県生まれ。著書に『五十八歳、山の家で猫と暮らす』『歳時記おしながき』『こんな、季節の味ばなし』ほか多数。好きな季節は、季節の変わり目。現在は八ヶ岳南麓在住。
