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花鳥でめぐる二十四節気/霜降そうこう

二十四節気と七十二候 2025.10.23

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◎霜降 10月23~11月6日  「晩菊とユリカモメ」

はやくも秋最後の節気となりました。霜降です。文字どおり、霜が降りるころという意味。木々が葉を落とし始め、秋のもの寂しさを感じます。日もだいぶ短くなりました。

いっぽうで、秋のおいしいものが溢れるころでもあります。銀杏、里芋、栗にむかご。新米と一緒に炊けば、どれも秋のご馳走です。果物も、柿に葡萄に洋梨に、ああ忙しい。そして、この季節を表すお漬物「晩菊」は山形の自慢の味です。細かに刻んだ野菜に食用菊もはいった奥深い味わい。

晩菊とは、残菊ともいい、そろそろ盛りを過ぎた名残の菊のこと。特定の菊の種を表すものではありません。菊の季節も終わりに向かい、野や庭の様子が冬枯れに移行していく、そんな様子をうまくイメージさせてくれます。

絵に描いたのはリュウノウギク。草から竜脳に似た香りの油が採れることからついた名です。一重の白い花がキリリと清楚です。そのリュウノウギクもそろそろ終わりを迎え、茎があちこちに乱れています。

その向こうの水の上に浮かぶのはユリカモメ。冬羽になって、頭も白くなりました。何羽も集まって、上下に揺れる水面に連れて漂う様子には、愛くるしいものがあります。「都鳥」の別名でも親しまれる水鳥です。

『古今和歌集』にある在原業平の歌に、都鳥が登場します。

名にし負わばいざ言問はん都鳥我が思ふ人はありやなしやと

この歌は、能「隅田川」のなかで、連れ去られた子を探して彷徨う母の悲しい物語にも使われます。その連想で、晩秋のこの季節も相まって、ユリカモメを見るとどうにも心寂しくなるのを避けられません。

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平野恵理子

イラストレーター、エッセイスト
1961年静岡県生まれ。著書に『五十八歳、山の家で猫と暮らす』『歳時記おしながき』『こんな、季節の味ばなし』ほか多数。好きな季節は、季節の変わり目。現在は八ヶ岳南麓在住。

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