こんにちは。料理人の庄本彩美です。京都は徐々に暑くなり、梅雨入りが近づいてきています。本日は新生姜(しんしょうが)のお話です。
「新生姜の季節が来ましたよ~」と言わんばかりに、スーパーの店頭に大きな新生姜たちが置かれ始めた。
季節の保存食は、時期を見逃してはならない!と分かってはいるものの、新生姜の手しごとについては少し気が乗らない。
「まだ並び始めたばかりだし、もうちょっと後でもいけるかな……。昨日、実山椒を買ったところだし。小梅だってまだなんだもの」なんて言い訳をしている自分がいる……。そんなことを言っている間に、店頭から消えてしまうのは分かっているのだが。
薄い色で、鮮やかな赤い茎をしている新生姜。まだよく食材について知らないころは、どうしていつもの生姜と違うのだろうかと不思議だった。
新生姜とは、収穫された直後の生姜のことを言う。
旬というのは収穫最盛期のことだが、実は露地ものの生姜の旬は9月~10月ごろ。この頃に掘り起こされたものも新生姜と呼ばれるが、消費者としては夏のイメージが強い。今の時期に並ぶ新生姜は、多くがハウスものらしい。
スーパーに常時置いてある生姜は、新生姜を数ヶ月貯蔵してから出荷されるもので、年間を通して販売されている。しばらく置いておくことで、水分が抜けて硬くなるのだ。ぴりっとした辛味が出てくるので、薬味や臭み抜きに向いている。
新生姜は、採れたてなので甘いうえに、水分をたっぷりと含んでいて柔らかい。その味の繊細さを活かした料理が美味しい。
新生姜の保存食というと、お酢のさっぱり具合が食べやすい「甘酢漬け(ガリ)」や、炭酸で割って飲むとすっきりする「ジンジャーシロップ」がある。どちらも暑い夏にぴったりなメニューだ。
甘酢漬けは、お酢につけると、すうっと薄紅色に変わり、食材同士がもつ力を気付かせてくれるし、ジンジャーシロップは、生姜の量やスパイスを自分好みに調整して、新たな味に挑戦する面白さもある。
そんな楽しい手しごとなのに迷いが出てしまうのは、新生姜を仕込むとあの暑い暑い夏がくる気がするからだ。
京都の夏はとにかく暑い。出来ればここ数日の気持ちのいい天気のままでいて欲しい…。
そんな思いがあるので、新生姜の仕込みになかなか手をつけられないでいるのだ。
しかし、暑い夏を助けてくれるのも新生姜。去年は祖母作の「新生姜の佃煮」にとても助けられた。
生姜をスライスし、みりんと醤油で煮詰め、鰹節や胡麻を混ぜたもの。新生姜で作ると、柔らかさがあり優しい佃煮になる。
これからの季節は、どうしても食欲が減りがちで、火を使う台所に立つのも億劫になってしまう。
そんな時に、この佃煮は白米によく合うので、食事量が減らず、夏バテせずに今夏を乗り切る強い味方になってくれるだろう。
外を歩いていると、日ごとに暑さを増してきた。
「今年の夏も容赦せんから、はよ生姜の佃煮作っときいや~」と急かされている気がしてならない。やはり自然には太刀打ちできない。
「そろそろ無駄な抵抗はやめて、夏を迎えることにしよう」と、そっと買い物かごに新生姜を入れた。
庄本彩美
料理家・「円卓」主宰
山口県出身、京都府在住。好きな季節は初夏。自分が生まれた季節なので。看護師の経験を経て、料理への関心を深める。京都で「料理から季節を感じて暮らす」をコンセプトに、お弁当作成やケータリング、味噌作りなど手しごとの会を行う。野菜の力を引き出すような料理を心がけています。
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