こんにちは。料理人の庄本彩美です。庭の緑の植物たちが今年はとても美しいです。
今日は筍(たけのこ)のお話です。
この時期を代表する味覚である筍。その漢字は、竹かんむりに旬と書いて「たけのこ」と読む。
旬とは、ひと月を上旬、中旬、下旬と言うように、約10日間のことを表す言葉だそうだ。
筍は、帽子をかけて忘れて帰ると、翌日には手が届かなくなってしまうと言われるほど成長が早いそう。
1旬(10日間)で竹になってしまうから筍。そんな束の間の味覚だから、タイミングを逃してはならないのだ。
この時期には毎年、父が山で取った筍が、水煮になった状態で実家から送られて来る。しかし、時間が経っているからか、えぐ味が強いことも多い。そんな時は、濃いめの味付けにするのが美味しい。
私が好きなのは「筍のバルサミコソテー」
なたね油で弱火でじっくり焼き目をつけて、みりん、醤油、バルサミコ酢で味を整えたもの。油が筍のえぐ味をコーティングするのだ。
筍を盛りつけてから、手の中で木の芽をぱんっと叩いて香りを出して添えると、旬の一皿になる。
今年は思いがけず、家で過ごす時間が増えたため、野菜とゆっくり向き合う機会が多くあった。バルサミコソテーにした実家の筍をつまみながら、ふと「今年は自分で筍のアク抜きをしてみよう」と思い立った。
お世話になっている野草採りの名人から「筍も仕入れられるよ」と丁度、連絡があったのでお願いすると、さっそく大原から採れたての筍が大小3本届いた。採ってから3時間も経っていない非常に新鮮なものだった。
台所に立つ母の横で、あく抜きの作業は見ていたはずなのに、さっぱり覚えていない。スマホで検索しながら糠と唐辛子を用意し、一つ一つの手順を確認しながら筍に包丁を入れ、鍋に火をかけた。
一晩おいて、流水で糠を落としながら皮をむくと、中から白色の筍がつるんと顔を出した。先っぽの姫皮がぴんと立っている。包丁で切って口に含むと香りが広がる。えぐ味はほぼなく、するりと喉を通り抜けてなくなってしまった。
出来立ての筍の美味しさは、料理した人の特権だなぁと、しみじみ思いながら、気がついたらお皿に醤油を垂らして、箸が止まらなくなってしまっていた。
あく抜きの勝手も分かったので、今度は筍の瓶詰め保存に挑戦しようと思ったが、例の名人から「もう筍の時期は終わってしまったよ」と言われてしまった。10日間の「旬」を逃してしまったようだ。筍の季節は、来年までのお楽しみとなった。
これから実山椒、らっきょう、梅シロップ、梅干し、新生姜と旬の素材の保存食ラッシュが来る。忙しいけれど、一瞬一瞬の季節を楽しむ時間だ。
私たちの社会状況や気持ちに関係なく、自然のサイクルはただ粛々と流れ、季節を告げてくれる。そんな自然と共に生きる楽しみも忘れずにいたいものだと強く感じ、料理をしながら過ごしている。
庄本彩美
料理家・「円卓」主宰
山口県出身、京都府在住。好きな季節は初夏。自分が生まれた季節なので。看護師の経験を経て、料理への関心を深める。京都で「料理から季節を感じて暮らす」をコンセプトに、お弁当作成やケータリング、味噌作りなど手しごとの会を行う。野菜の力を引き出すような料理を心がけています。
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