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大根だいこん

旬のもの 2020.12.06

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漬物男子、田中友規です。

今年は寒さこそそれほどではありませんが、色づいた紅葉も見頃が過ぎて、いよいよ冬。

近所に住む親戚から立派なふぐをたくさんいただきまして、今夜はてっちりです。
半透明の身はむっちりと肉付いて、さっと湯にくぐらせれば、キュッと引き締まり、余計な水分が抜けて旨味が凝縮していくのがわかります。

ふぐにはポン酢と相場が決まっていますが、ここで欠かせないのが「もみじおろし」です。
普通の大根おろしに一味をかけても同じ事、とわかっていても、あの赤い存在はちょっと特別。

大根の甘みと、鷹の爪の辛味が相まって、他の薬味とはちょっと上の味わいです。

ふぐの淡白さの奥にある深い旨味に、辛味と酸味が加わって、口の中で味の輪郭がはっきりとしてくるのです。

辛味は不思議。
素材の持ち味を引き締めてくれることに気づいたのは、お漬物を漬けている時でした。

お漬物には昆布と鷹の爪がはいっていますが、あまり辛味は感じませんよね。
しかし僅かながら溶け込んだ辛味が、野菜の水臭さを引き締めてくれているのです。
もしご自宅で浅漬けなどを漬ける時は、ちょっとだけでも鷹の爪を加えて味の違いを感じてみてください。

さて話はもみじおろし。
大根にはもともと辛味があり、食欲増進、消化促進などの効果もあるので、唐辛子を加える必要もないのですが、風味がグンと良くなります。

もみじおろしを普段の食卓で作ることもあまりないと思いますが、ちょっと覚えておくと、ステーキでも、餃子の薬味にでも、いつもと違う雰囲気を楽しめるのでおすすめです。

鷹の爪にだって一手間かけて、フライパンで乾煎り。コクのある香りを引出します。
種を抜き、菜箸で大根に突き刺したら、すぐにすってはだめ。大根の水分で鷹の爪が柔らかくなってから、目の細かいおろし金ですりおろしていきます。

よく、怒っている人がおろした大根は辛くなる、なんていいますが、これはどうやら本当で、大根は直線的に強くすることで細胞が壊れ、辛味成分が強く仕上がります。
辛味成分は空気に触れることで揮発するので、甘めに仕上げたい時はゆっくりと丸くすりおろすとよいといわれています。

鷹の爪の香りを活かしつつ、大根の辛味はややマイルドに仕上げたもみじおろし。
ちょっと多めに作っておいてもいいですね。
明日は残ったふぐを唐揚げにしても、もみじおろしが活躍しそう。

明日の出番待ちのもみじおろしをタッパーにしまいながら、ふと、思いついたことがありました。
「新緑の青もみじおろし」は作れないだろうか?

たとえば青紫蘇と一緒に?
もしくは、グリーンペッパーとパクチーを合わせてみたり、はたまたバジルでもまた違う国に連れて行ってくれそうです。

せっかくなので、一番遠い組み合わせを試してみることにしてみました。
スパイスカレーの副菜として、ハーブの青もみじおろしはどうでしょう。

メインには大根とサバを使った出汁風味を使ったカレー。
そしてターメリックライスです。

予想外の組み合わせ!と思われるかもしれませんが、スパイスカレーの聖地・大阪では和風出汁とスパイス、ハーブの共存は日常。

大根、唐辛子、スパイス・・・辛味の相性には国境はないようですね。
ちょっと季節外れの青もみじでしたが大根が懐深く受け止めてくれました。

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田中友規

料理家・漬物男子
東京都出身、京都府在住。真夏のシンガポールをこよなく愛する料理研究家でありデザイナー。保存食に魅了され、漬物専用ポットPicklestoneを自ら開発してしまった「漬物男子」で世界中のお漬物を食べ歩きながら、日々料理とのペアリングを研究中。

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