こんにちは。料理人の庄本彩美です。太陽の光をいっぱい浴びた夏野菜が出回り始めました。今日は「獅子唐辛子」についてのお話です。
私はあまり獅子唐辛子を買うことがない。特にこの時期は、ぷりぷりテカテカのピーマンが美味しくなってくるし、肉厚で京都らしさのある万願寺とうがらしについ手が伸び、買い物カゴの中に入れてしまう。
獅子唐辛子は量も入っていてお得感があるものの、年中陳列棚の上の方でひっそり並んでいるものだから、季節感を感じにくく、存在を忘れてしまうことが多いのだ。

唐辛子は辛い「辛味種」と、辛味の少ない「甘味種」の2つに分けられる。
獅子唐辛子は「甘味種」に属している。しかし「食べるロシアンルーレット」と言われることもあり、ごく稀に辛いものに当たってしまうことがある。私も昔、激辛のものに当たった経験があるので、購入を戸惑ってしまうのかもしれない。今は品種改良により、辛いものが市場に出ることはほとんどないそうだ。

この辛味は、ストレスによって引き起こされるという。唐辛子も人間と同じでストレスを感じやすく、高温や極度の乾燥など、生育の過程で負荷がかかると辛味成分が増すそうだ。ちなみに激辛唐辛子を栽培する場合は、水やりを控えるなど、重い負荷を与えることによって辛味を増加させているらしい。
甘味種に属する唐辛子は、「伏見甘長とうがらし」「万願寺とうがらし」などがあり、ピーマンやパプリカも同じ部類に入る。
この中で「獅子唐辛子」は、他のものと比べて、えらく辛そうな名前ではないだろうか。

この名前の由来は、その形にある。
先端の形が「獅子」の頭に似ていることから、「獅子唐辛子」と呼ばれるようになったそうだ。他の唐辛子の多くは先端が細く、獅子唐辛子のような窪みができているものは少ない。
そうだったのかと考えていたところ、実家から届いた野菜便の中に丁度、獅子唐辛子が入っていた。なるほど、見事に獅子の頭に見える。私は、小さい頃に頭をかぶりつかれた獅子舞の「にっ」とした大きな口を思い出した。

元々、獅子唐辛子は辛いものが多かったようだ。そのため大衆に受けず、一般に広まったのは第二次世界大戦後で、歴史は浅いらしい。
唐辛子は栽培しやすく、品種改良が容易という利点があった。辛さに弱く、料理に調和を求める日本人は、辛味の少ない品種を生み出していった。江戸時代の頃には伏見甘長とうがらしが有名で、その後獅子唐辛子のような形のものが生まれた。万願寺とうがらしが生まれたのは大正時代の頃だそう。
改良の末に、辛みという獅子を手懐けることに成功した、といったところだろうか。
霊獣である獅子の頭には強い霊力があり、悪い気を食べてくれるという。獅子舞で人の頭をかぶりつくのは、人の悪を食べている仕草だそう。「獅子唐辛子の辛味は、獅子の力?」なんて思ったら、その辛さに当たるのはラッキーなのかもしれない。
獅子唐辛子の旬は、6〜8月だ。今年は商品棚にちょこんと鎮座している獅子唐辛子にも目を向けて、いろんな料理に挑戦してみようと思う。

ちなみに獅子唐辛子は、次から次に実がなるので、家庭菜園で育ててみるのも面白そうだ。
だたし、気温が25℃以上になると辛味成分が激増したり、生育日数が長ければ長いほど辛味成分が蓄積されていくらしい。
京都の夏は暑い。流石に、毎度辛いものに当たるのは御免である。眠れる獅子が起きる前に、早めにそっと収穫をした方が良さそうだ。

庄本彩美
料理家・「円卓」主宰
山口県出身、京都府在住。好きな季節は初夏。自分が生まれた季節なので。看護師の経験を経て、料理への関心を深める。京都で「料理から季節を感じて暮らす」をコンセプトに、お弁当作成やケータリング、味噌作りなど手しごとの会を行う。野菜の力を引き出すような料理を心がけています。
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