こんにちは。和菓子女子のせせなおこです。
まだまだ暑さが続くものの、ずいぶんと秋めいてきました。一日一日はとても長く感じるのに、本当に季節はあっという間にすぎていきます。秋めいてくると、涼しさにホッとする一方、今年の終わりを感じるようになってきて、ちょっとさみしい気分になったりもします。今日のテーマはそんな心をやさしく落ち着かせてくれる「和三盆(わさんぼん)」です。
和三盆は、主に徳島県や香川県などで作られる高級なお砂糖の名前です。盆の上で3回研ぐことから三盆の名前が付き、中国の「唐三盆」と区別するために「和三盆」と呼ばれるようになったと言われています。和三盆を固めて作られる干菓子はもちろん、最近では材料として多くの和菓子、そして洋菓子にも使われるようになってきました。
名前に「和」がついていることはもちろん、やさしくまろやかな味わいはとても日本らしい甘さだなと感じています。
そんな和三盆ですが、その誕生には長い歴史があります。
きっかけとなったのは、江戸幕府八代将軍徳川吉宗が行った「寛政の改革」で砂糖業を奨励したことです。当時は国内で砂糖を作るのが難しく、作られたのは黒糖のみ。そして、ほとんどを海外からの輸入に頼っていましたがそれがとっても高かったのです。
そこで、高松藩主の松平頼恭(まつだいら よりたか)が讃岐産業発展のために名乗りをあげます。松平頼恭が医者の池田玄丈(いけだげんじょう)に指示を出し砂糖の研究が始まります。しかし、砂糖作りはとても難しく、完成することなく池田玄丈はこの世を去ります。
あるとき、四国遍路を巡る途中で急病により倒れた関良介(せきのりょうすけ)という人物を、池田玄丈の弟子向山周慶(さきやましゅうけい)が助けました。その関良介は薩摩出身でサトウキビ栽培の知識を持っている人だったんです。なんという偶然!!
そして、助けてもらったお礼として、サトウキビの苗を薩摩から死罪を覚悟で持ち出し、向山周慶へ届けたのですが、またもや試練が。薩摩と讃岐、土壌の違いにより、黒砂糖ができなかったのです。そこで、それを逆手に取り、作られた白砂糖、それこそが和三盆だったのです。
まさか歴史の授業で習った「寛政の改革」で砂糖作りが奨励されていたとは…!知っている、と思っていることの中にも意外なものが隠れていて、改めて知ることのおもしろさを学ぶきっかけになりました。また、普段、当たり前に使っている砂糖は人生をかけて繋げてくれた人たちがいたおかげで、こうして普通に食べることができるんだなと感じると同時に、その時に評価されなくても、次の時代に繋げていくかっこよさを感じました。和三盆はそんなことを教えてくれるきっかけになった大事な和菓子です。
やさしくまろやかな味わいの和三盆。毎日の忙しさの中にゆったりとした気持ちを思い出させてくれるお菓子です。
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