ごぼう、にんじん、しいたけ、まいたけ、銀杏、栗..
この時期になるとスーパーに並ぶのは、旬の食材たち。おいしいだけではなく、豊かな彩りで食卓を盛り上げてくれます。

そんな時期にぜひ楽しんでいただきたいのが「吹き寄せご飯」です。
「吹き寄せ」とは、秋に色づいた葉っぱや花びらが風に吹かれて散り、一箇所に集まった様子を表します。赤、黄、緑、茶..と自然の色が重なったところに、木枯らしが吹きつけ、くるくると回ったり散り散りになったり。その様子に情緒を感じ、愛でてきた日本人の感性から生まれた言葉です。
語呂合わせから「冨貴寄せ」とも書き、おめでたい文様としても親しまれています。

その「吹き寄せ」に見立てて、旬の味覚や彩りをひとつに盛り込むことを「吹き寄せご飯」と言うようになりました。なかでも家庭でよくつくられるメニューが、炊き込みご飯です。

「吹き寄せご飯」といっても、実は明確なルールはありません。旬を感じて、彩りよければ、なにを入れてもいいのです。そこで、私も冷蔵庫にあるもので早速つくってみました。にんじん、しめじ、さつまいも。これだけで3色あるので、充分ですね。

食材を並べて切っているときから、心が踊ります。にんじんの鮮やかなオレンジ、肉厚なしめじの弾力、さつまいもの艶感..。感性が刺激されるようです。
材料が準備できたら、収穫したての新米と一緒に土鍋に投入します。出汁もほしいから油揚げも追加で入れて、あとは少しだけ味付けをしてから火を入れます。

待つこと約30分。蓋をあけると、湯気とともにふわりと素材の香りがたちのぼり、身体がほくほくしてきます。お気に入りのお茶碗によそって、完成です。

彩り豊かで、食卓がパッと華やぐ見た目。これだけで「おいしい」の半分以上は満たされたような気分になりますし、さらにお味噌汁があれば完璧。手の込んだおかずは必要ありませんね。
噛むほどににんじんやさつまいもの甘み、しめじの香りが口の中で広がって、朝から幸せな気分で満たされます。
また、炊き込みご飯が少々面倒なときは「食卓全体」に彩りをプラスするやり方もあります。
私がよくやるのは、うつわと食材の掛け合わせ。
例えば、ブルーのうつわに、トマトの赤色を合わせてみたり、茶色のうつわに、かぼちゃの黄色を合わせてみたりします。さらに道端に咲いていたお花も一緒に添えてみると、それだけであっという間に「吹き寄せ」食卓の完成です。

テーブルクロスで色を持ってきてもいいですし、葉っぱやどんぐりなど旬のアイテムを置いてみてもいいと思います。とにかく、ただひたすらに自分の感性に任せて、自由にやってみること。これが大切だと思います。
忙しいと、なかなか食卓まで気が向かない日もあると思います。
そんな中でも、心から「きれいだな」と思うほんの一瞬が、家の中に散りばめられたら。
わざわざ遠出をして紅葉を見に行かなくったって、自宅で季節を感じながら楽しむことができるのかなと思います。
そう考えると「吹き寄せ」という言葉の奥には、昔から日本人が大切にしてきた心が宿っているのかもしれませんね。
みなさんは、どんな「吹き寄せ」を楽しみますか。
私は、また今回とは違う食材をたっぷりいれた炊き込みご飯をつくってみようと思います。

高根恭子
うつわ屋 店主・ライター
神奈川県出身、2019年に奈良市へ移住。
好きな季節は、春。梅や桜が咲いて外を散歩するのが楽しくなることと、誕生日が3月なので、毎年春を迎えることがうれしくて待ち遠しいです。奈良県生駒市高山町で「暮らしとうつわのお店 草々」をやっています。好きなものは、うつわ集め、あんこ(特に豆大福!)です。畑で野菜を育てています。
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