こんにちは。ライターで僧侶の小島杏子です。
寒い日がつづきます。外出もなかなか気を遣うこの頃、「温かい食事だけが一日の楽しみ」なんて日もあります。
特に、食卓にあたたかい汁物がのぼると、冬に体調を崩しがちな私は、身も心もあたたまるような心地がします。こっくりとしたポタージュも良いし、だし香るお澄ましや、中華風スープも美味しい。具がたくさん入った食べ応えのあるお汁を作っておけば、品数が少なくても満足感のある食事ができます。
今日はそんな具沢山お汁の代表格のひとつ、『けんちん汁』についてのお話。
けんちん汁をいくつかの辞書で引いてみると「豆腐と、細く切った野菜とを油で炒めて、醤油仕立ての澄んだお汁に仕上げる」といったことが書いてあります。
けんちん汁がどういった料理であるのか、という部分については、どの辞書にもたいていこのようなことが書いてあるのですが、これが由来の話になるとずいぶんいろいろと説が登場します。
まずは「建長寺の汁」がなまって、いつのまにか「けんちん汁」と呼ばれるようになったという説。鎌倉五山のひとつ、臨済宗建長寺派の本山である建長寺で、修行をして暮らす僧侶たちのために供された精進料理が元になったというのです。
精進料理ですから肉や魚などは使わず、野菜も皮まで余さず食べます。また、多くの僧侶に平等に行き渡るよう、野菜は細く切るのが習いなのだとか。
鎌倉での修行の日々、たくさんの野菜とあたたかいお汁はどれほど身に染みるものであろうかと想像してしまいます。
辞書に多く見られた説としては、中国伝来の巻繊(チュワンチエン/ケンチェン)という料理が元となり、「巻繊汁」「けんちん汁」と変化していったというものです。
巻繊とはどういう料理かというと、細く切った野菜や豆腐を、卵や昆布、湯葉などで巻いて、油で炒めるというものです。細かいバリエーションはさまざまあるようですが、こちらの「けんちん」もなんだか美味しそうです。
他にも、新潟や千葉の一部、長野、熊本、鹿児島の郷土料理である、という記述もありました。
由来はさまざまで、どれが正しいのかは定かではありません。しかし、由来がたくさんあるということは、もしかしたら、多くの人に愛されてきた料理であるということなのかもしれませんね。
数百年前の冬、鎌倉の禅寺でけんちん汁を食して心身をあたためた僧侶がいたかもしれないし、中国から伝わった料理を、体調が優れない人でも食べやすいようにお汁にアレンジしてみようと思い立った誰かがいたのかもしれない。多くの名も無き誰かが、この料理を作ってきた。彼らの「美味しい」や「ホッとする気持ち」がこの料理を、今にまで伝えてきたのではないかと想像します。
今日、あなたがいる街は寒いでしょうか?
身も心もあたたかくほぐしてくれるけんちん汁。ありあわせの材料で、今晩作ってみるのはいかがでしょうか。
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