こんにちは。気象予報士の今井明子です。
3月は卒業式、4月は入学式。出会いと別れの季節を彩るのは、桜の花という地域も多いことでしょう。
毎年春先になると、民間気象会社がこぞって桜の開花予想を出します。日本列島上で桜の品種、ソメイヨシノの開花日を線でつないだものが桜前線です。桜前線は毎年3月から九州や四国南部から北上を始めて、5月に北海道に到達します。
それにしても、なぜこんなに詳しく桜の開花日が予想できるのでしょうか。それは、桜の開花が気象条件の影響を受けるからです。桜は、前の年の夏にはすでに花芽ができています。しかし、すぐに咲くわけではありません。晩秋から冬にかけてはいったん成長を止めて休眠に入ります。真冬の寒さによってこの休眠が打破されると、再び花芽は成長を始めます。そして、気温がある一定以上になると開花するのです。
暖かい日々が続けば桜はすぐ咲きそうに思うのですが、冬にしっかり冷え込まないと休眠は打破されないので開花は遅くなります。寒くなるべき時に寒くなり、その後はしっかり暖かくなるという、メリハリのきいた季節の変わり方が桜の開花を促すのです。
そして、桜の開花日を計算する「公式」もあります。2月1日からの日々の平均気温を足して、400℃を超えると桜が開花するという「400℃の法則」や、2月1日からの日々の最高気温を足して600℃になる頃に桜が開花するという「600℃の法則」というものがあります。ただ、これらの法則はそこまで精度は高くなく、1~3日程度の誤差があるようです。民間気象会社は、独自の計算式によってもっと精度のよい予想を行い、発表しています。
しかし、こんなに精度よく開花日が予測できるというのも不思議ですよね。これは、予測する桜の品種がソメイヨシノだからです。ソメイヨシノは種ではなく、挿し木や接ぎ木で数を増やすので、全国のソメイヨシノはすべて同じ遺伝子を持っているクローンです。だから、ほぼ同時に咲いてパッと散るのです。
…と書くと、「いやいや、うちの庭のソメイヨシノは近所のどこよりも早く開花するよ」と思うかもしれません。それは、木によって日当たりが違うからです。ほかの場所よりもたくさん日が当たって暖かいのなら、それだけ周囲よりも早く開花してもおかしくないわけです。
桜の季節は天気もコロコロ変わります。今年は花見に行くつもりで開けておいた休日までに花が散ってしまわないのか、そして休日にしっかりと晴れて花を愛でられるのか。しばらく天気予報と花をにらめっこしながらやきもきする日が続きそうですね。
今井明子
サイエンスライター・気象予報士
兵庫県出身、神奈川県在住。好きな季節はアウトドア・行楽シーズンまっさかりの初夏。大学時代はフィギュアスケート部に所属。鯉のいる池やレトロ建築をめぐって旅行・散歩するのが好き。
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